独りよりふたり

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     食卓に並ぶ料理を前に凪は申し訳なさそうに頭を垂れさせた。 「すみません…質素なおかずで…。」  白米、鯖の煮付け、豆腐に野菜という凪には十分な内容である献立。  しかし男にとっては物足りないだろう。  親の仕送りで生活するため倹約は欠かせない。  その上、和食しか食した事がないであろう土方の口に合う料理をと考え作った結果がこれらであった。 「質素?十分だろ。」  落ち込む凪とは裏腹に、合掌した土方は嬉しそうに沢庵に箸をつけた。  歯切れの良い音を出して沢庵を官能した土方は、次は魚に箸を伸す。 「贅沢な時代なんだな。」 「……え……?」 「こんな飯を食ったのは、会津藩主松平容保様御預かりとなり新選組と名乗ってからだ。」  鯖を一口食べた土方は「美味ぇ。」と黙々と箸を動かした。 「おめぇは学もあるようだが、家は商家か?」 「いえ、両親は普通の会社員ですけど。」   「親御さんは出稼ぎで居ねぇのか?」 「え、と……。」  魚の骨を取り分けていた箸を止めた凪は明らかに動揺の色を見せる。 「親、は別の家で住んでいて私は一人暮らしなんです。」  なんで?  そう出掛かった言葉を土方は飲み込んだ。  深入りするつもりではない土方であったが、凪のあからさまな態度に違和感を感じた。  それに昼間「詮索はしない。」と言ったばかりで、気になろうと自分からは聞きづらい。 「私、弟がいるんです。」  ぽつりと告白した凪の口調はまるで他人事のようだった。  
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