独りよりふたり

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    「弟…なんですが実は一度も会った事が無いんですよ。歳が離れてまして、今年二つになるんです。」  凪は目を伏せ、哀愁漂う微笑みを見せた。 「母は同じなんですが、父親が違うんです。私が十五の時に再婚して弟ができて、私は厄介払いされちゃいました。」  凪が高校へ上がると同時に一人暮らしを始めたのは、弟の誕生がきっかけであった。  義父と馬が合わなかったわけではなく、血縁である母との関係が上手くいかなかった。  産まれてからは一度も母親ともあっておらず、たまに必要最低限の電話がある程度。 「たぶん後ろめたいんですよ。違う人との子供の私の存在が義父さんに。私もお母さん達には楽しく暮らして欲しいですし。」  一人暮らしも気楽で良いものですしね。と土方に笑って見せた。 「…本当は寂しいんじゃねぇのか。」  実の親に除け者扱いされて寂しくない子供などいないだろう。  事情はどうあれ、聞いた限りで親の都合に振り回されている凪を不憫に想った。 「寂しかったですよ?すっごく。…でも……土方さんがいるから今は寂しくないです。」 「あ、そ……。」 「ふふ。ありがとうございますね。」  ふたりはほかほかと温かいモノを胸に感じながら沢庵をかじった。  
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