湧いて出たのは。

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    「主犯を出しやがれ。てめぇじゃあ話にならねぇ。メリケン野郎。」 「メ、メリケン…っ!?」  まさかメリケン野郎だなんて自分が言われるとは思いもしなかった凪。  それにしてもおかしい。  メリケンとは明治より前の時代から、外国人に対して使われていた言葉。今やその言葉は死語のようなものだ。  「主犯を出せ。」と男は要求した。凪からしてみれば「それはお前だろう。」と言いたい。  なのに不思議と男に対する危機感が薄れ、凪は怖々と口を開いた。 「……あの、泥棒じゃないんですか?」  自分より頭一つ分小さな凪を男は圧するように睨む。 「泥棒だと?よく言うぜ。人の寝込みを連れ去っておいて。」 「……はい?」 「ちっ、とぼけんじゃねぇよ!どこのもんだ、長州か?」 「いや、何の事だかさっぱり……。」 「あー!もういい!!」  男は二度目の舌打ちをすると、凪を押し退けて玄関へ向った。  またもや呆然と男の背を見つめる。  ――…何か、恐ろしいくらい噛み合わなかったな…。  何もされず帰ってくれるようだと胸を撫で下ろした束の間、けたたましい打撃音を鳴らしながら男は玄関のドアを叩きだした。  発狂し始めた男に凪は震え出す。 「んだこりゃあっ!」 「……誰か…助けて……。」  近所迷惑にも甚だしい騒音だ。 「おいっメリケン野郎!てめぇ開けねぇと斬るぞ!!」 「――やっ……!」  鯉口を切りながら近付いてくる男に恐怖を覚え、凪は一目散にベランダへ走り出した。  だが辿り着く前に呆気なく腕を拘束されてしまう。 「嫌!私なにも知らないから……!」 「嘘言え!てめぇら反幕府派が俺を狙ってることあ知ってんだ!生憎、俺を殺っても奴等は折れねぇがな………新選組は!」    
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