湧いて出たのは。

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     真顔で“反幕府派”やら“新選組”の単語を放つ男を前に凪は対処しきれず言葉を失っていた。  ――カア――カア――。  夕暮れ時になると、必ず凪の住むマンションの真上を鳴きながら飛んで行く烏の鳴き声がした。  その声に凪は、はっとした。 「…あの、付かぬ事を伺いますが……。」 「あぁっ!?」 「っいえ、何でも無いですっ!!」 「はあ?言え!!」  涙目でたじろぐ凪はもごもこと口を開いた。 「……貴方は…お侍さん…?」  ――馬鹿げた質問。  自分でさえそう思いながらも、時代劇よりも完成度の高い男を目の前にし、聞かずには居られなかった。   「は?見ての通り――…」  ――侍だ――……。 「……ちょ、ちょっと待って下さい?」  いつの間にか自由になっていた手を額にあて、凪は思考を巡らす。  自分は偶に想像する事がある。  “瞼を開けると異世界にタイムスリップしていたら楽しいだろうなぁ……”と。  その願望は願う事すら虚しいのが現実だが。  だがもし。  もし、彼が映画や物語のように過去からやって来たのであらば?  彼はこう言っていた。  “新選組” 京都を拠点に活動をしていた剣客集団新選組だ。幕末を生きた筈の人間が百十数年後の未来へ………?  有り得ないと思いつつも、凪の心の何処かではその異様な現象を期待していた。 「貴方の名前は?」 「土方歳三だが……。」  小動物の如く縮こまって怯えていた少女が、急に態度を変えたので土方は少し怯む。  
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