疑惑

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陣地を飛び出した私は体には鎧を纏い、朱の外套をはためかせながら深夜の深山の町を駆ける そしてようやく衛宮邸の前にたどり着いた私は、そこにいる人物に気付き絶句した 「………なぜ」 私に背中を見せながら歩くその男は、その呟きに立ち止まり 「なぜ、貴様がここに『いる』…………言峰 綺礼ッ!」 その叫びに、振り返った 「……………………」 「……………………」 右手に、レンゲ 「……………………」 「……………………」 左手には『赤い何か』の入った器 「……………………」 「……………………」 その凶悪なまでに赤い…匂いだけで舌がピリピリと痺れるそれを、私の擦り切れた記憶の底……体が覚えていた その名も『殺人麻婆』 中華料理【泰山】にある名物料理だったはずだ 「……………………」 美味いというのか。あのラー油と唐辛子を百年間くらい煮込んで合体事故のあげく オレ外道マーボー今後トモヨロシクみたいな料理が美味いというのか………っ!! 「……………………」 その男はレンゲを動かす手を止め、真顔で大粒の汗を浮かべながら言った 「………………喰うか?」 「喰うかぁっ!」 そうした間抜けなやり取りを経て、私はこのエセ神父と再会を果たしたのだった…………image=236867633.jpg
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