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二時間たって
やっと解放された。
桜井社長について店を出ようとした時、
神崎って人があたしに声をかけた。
「樹里ちゃん、寮まで送るよ。」
「あたし…社長と一緒なんで、大丈夫ですよ。」
そう言いながら、
桜井社長に目配せする。
「いや、今日は遅くまで付き合わせちゃったし…」
返事に困るあたしを見て、
桜井社長が口をはさんだ。
「せっかくそう言ってくださるんだから、送ってもらいなさい。」
これで、
断る理由もなくなった。
「はい…」
しぶしぶ返事する私を尻目に、
社長は神崎に深々と頭を下げる。
「では、私はこれで…今日はありがとうございました。」
一瞬だけ
私に目をやる桜井社長。
「樹里をよろしくお願いします。」
そう言って、
置き去りにされた。
今思えば、これが…
桜井社長が
あたしを売り渡した瞬間だった。
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