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資料室の中は、紙の古びた、独特の匂いに包まれていた。
最近の資料はすべて電子化されている。
ここにあるのは、一昔前のものばかりだ。
長い時間はわら半紙を黄ばませ、当時は美白を誇っていたはずの上質紙をくすませる。
室内には背の高い本棚が所狭しと設置され、埃くさいファイル達が、窮屈そうに並ばされている。
人の滅多に訪れない、旧校舎三階の片隅にあるこの部屋で、目的の人物は優雅に紅茶をすすっていた。
「先生。現文のノート、言われた通り持ってきましたよ」
クラスの人数分を抱えながら迷路を抜けると、旧型のやたらでかいコピー機の隣に、職員室でおなじみの、金属製のデスクがある。
デスクチェアに腰を落ち着けた“彼”が振り返ると、ダージリンの濃い香りが漂ってきた。
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