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そんな城井先生は、香緑学院の教師陣の中で最も若い。
実際の年齢はよく分からないが、見た目だけで判断すれば、まだ三十代に至っていないだろう。
これが、時計以外の、城井先生が有名な理由となっていた。
なまじ若くて顔が良いばかりに、あるいは親しみやすい先生として、あるいは恋愛対象として、良くも悪くも生徒から慕われ、いつも注目を集めているのだ。
覚えていない方のために、もう一度言おう。
私立香緑学院高等部は男子校である。
城井先生に抱かれることを夢見る一途な男子は一部だが、俺の友人のひとりには、パンピーの城井先生を抱くことに憧れる、かなり希少で物騒なやつがいる。
そして俺はそいつらの、羨望とやっかみの対象になっていた。
理由は至極簡単。
俺が城井先生に、目を付けられているからだ。
授業ではしょっしゅうさされるし、今日のような雑務だって、ほとんど俺が頼まれる。
ホームルームでは、本来存在しない“雑用係”という役職が、最近密やかに産声をあげた。
そこに名を連ねるのは、言わずもがな、俺だ。
どうやら俺は、城井先生に嫌われているらしい。
しかしそれでも、好きな人の関心を得ている人に憧れを抱く純情は、古今東西、老若男女を問わぬもの――俺にしてみれば、授業の解答権も、雑用係の籍も、むしろもらってほしいと願うものである。
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