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ステラが打ち込めばケンはそれを避け、ケンが打ち込めばステラがそれを防ぐ。
まさに一進一退だ。
このまま剣戟が続くのだろうかと思われたが、ステラはついにしびれを切らしたのか、今までのどれよりも速くケンに打ち込んだ。
ケンはそれを避けることはできず、咄嗟に防御してそれを防ごうとする。
「おっと!!」
だがケンの防御がしっかりできていなく、ステラの一撃が重たかったせいか、ケンは後ろによろめいてしまった。
ステラはそれを好機と見てか、スッとケンに近づく。そしてケンに一撃を放たんとした。
だが刀がケンに届こうとした瞬間、ステラの刀は急にその姿を消した。
そして数秒後、彼女の左側で刀が落ちるような音が聞こえた。
おそらくは自分の刀だろう。
そう思ったステラは一瞬だけ自分の刀の方に気がいってしまう。
だがそれが甘かった。
急にステラの目の前に刃が現れる。
色は漆黒、そう、ケンの刀、『妖刀村正』だ。
ステラは動きを止めた。動いてしまっては斬られてしまうからだ。
ケンは軽く上体を傾け、ステラに刀を向けていた。
そしてケンは顔を上げる。
そして彼女に笑って見せた。
だがそれは決して微笑みかけるような笑顔ではなく、勝ち誇ったようなものだった。
「……惜しかったな。」
「……ま、参ったわ。」
ステラは両手を上げる。
どうやら降参のようだ。
ケンはステラのその言葉を聞くと上体を伸ばし、刀を鞘に収めた。するとまたケンは彼女に笑顔を向ける。
だが先ほどのものとは違い、優しげなものだ。
「それにしてもステラは本当に腕を上げたな。
いつか俺を超えるんじゃないか?」
「いや、それは無理だから。」
ステラはすぐさま否定する。するとケンはやれやれと言った顔をした。
「おいおい、そんなこと言ってると強くなれないぞ?」
「た、確かに強くなりたいけど、あなたは特別でしょ?できればもっと現実的な人にして欲しいわよ。」
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