第壱章/義勇軍

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と撫でて何処かへ行ってしまった。 劉備はその風景を見て笑っていた。 ポカーンとなる。誉めてくれた。あの張飛が。 クシャクシャになった頭を今度は劉備が撫でていた。 「ボサボサだな。加減して撫でてやればよいものを。」 劉備と目が合い何故か互いに笑ってしまった。 居心地の良さに安心感がそこにあった。 劉備は日本人と何処か通じる所がある。 そう思えた。 だから日本人に劉備は受け入れられ、演義の通り正義と見えたのだろう。 篝火が焚かれ暗かった外と城内がオレンジ色に照らされる。 「さて、馬超殿には今宵お引き取り願おう。」 劉備がボソッと言った。 「再戦ではないのですか?」 思わず聞いてしまった。 怪訝な顔一つせずに劉備は答えてくれた。 「させてやりたいのは山々だが、このまま戦わせてもどちらかが死ぬまで戦い続けると思うのだよ。最悪2人を同時となる事も。張飛は私の義弟だ。失う訳にはいかない。だから馬超殿にはお引き取り願うのだよ。」 確かに劉備の考えに納得する。事実再戦は後回しになっているのだ。 だが………。 「張飛様が納得なさいますかね?」 「聞かぬだろうな。」 笑いながら言った。 笑う事ではない。納得しなければ馬超と再戦しにいく。 「どうであれ、戦わせるわけにはいかん。張飛には悪いとは思うがな。」 燎嵩に苦笑を見せながら劉備は張飛の下へ歩いて行った。 案の定張飛はやる気満々で関門を出ようとしていた。 「やる気満々ッスねぇ。」 遠目で見ていた燎嵩はボソッと漏らした。 何で一休みしただけで回復するのか驚く。 普通なら乳酸が肉体に溜まり、筋肉にも二酸化炭素が回る。 筋肉は痙攣し動く事さえ出来なくなるのだが、基本的な体力が違うのか、軽くストレッチをしていた。 「俺だったら動けないよなぁ。」 引きつり笑いが出てしまった。 張飛の後ろから劉備が声をかけた。 「張飛、夜になったから決着は明日にな。」 その言葉に張飛が烈火の如く反応した。 「何言ってんだよ兄者!?おりゃぁ行くぜ!バカにされっぱなしで終われるかってんだ!」 そんな熱い張飛に劉備は至極冷静に返す。 「ダメなもんはダメだから。」 張飛だけではなく周りの兵や燎嵩も止まってしまった。 鎮火。 「ええっ!?兄者ぁどうしてだよぉ!」 熱い張飛はさっきの冷静沈着な劉備に消火された。 張飛は必死に再戦を劉備に訴えている。 「アイツだってぜってぇ来るってぇ!兄者ぁ!」 それでも劉備は張飛に言った。
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