第壱章/義勇軍

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「うん、ダメなもんはダメだから。」 聞く耳持たずとはこの事だろう。 右から左に聞き流す。 聞いてないのも一緒だが、あえて聞いていないのだから質悪い。 結果は何度訴えかけようとも変わることはないと言うことだ。 誰かに似ている。 戦国時代にも似たような輩がいたと思い出す。 「見事なタヌキっぷり。」 劉備に何度懇願してもダメな事を悟り張飛は致し方なく諦めた。 「ま、諦めがいい張飛なんて聞いた事ないからね。」 多分記憶が間違っていなければ外から馬超が挑発をするはずだ。 燎嵩は関門の方向を見た。 他のみんなはもう終わったとばかりに撤収の準備に取りかかっている。 張飛ものそっと動き始めた、その時であった。 「張飛!!出てこないのか!?我はここぞ!!」 馬超は関門の外から声を張り上げていた。 「馬超だ。」 燎嵩は思わず口にしてしまった。 みんなも声に驚き関門に注目する。 張飛も動きが止まり関門を睨む。 「臆したか!?臆したのだな!!この馬超に臆したのだな!!」 馬超の笑い声が高らかに聞こえてきた。 そ~っと張飛を見ると、かなり激高しているのが分かった。眉間は深くシワを刻み、こめかみには血管がピクピクと浮かんでいて、歯軋りをギリギリとしていた。 特に目が眼光鋭く鈍く光っていたのだ。 -やばい。関門破って行っちゃうぞ。- 「なろぉ~。勝手な事ほざきやがってぇ~。」 ドスドスと兵たちをなぎ倒し蛇矛を再び手にして関門の方へ歩き出した。 それに気付いた劉備が慌てて止めに入った。 だが、振り切って遂に関門を開けてしまった。 「張飛!!」 ドスドスと馬超の元へ出る。 馬超はニヤリと笑う。 そして馬超は馬を翻し逃げ出した。 「!?」 張飛も意表を突かれ慌てる。 兵たちに馬を用意させ、張飛は馬超の後を追って行った。 劉備は慌てて馬に乗り張飛を追おうと関門を出ようとしていた。 「劉備様出られるのですか!?」 兵たちが止めようと劉備に張り付いた。 「止めねばならん。張飛を失ったらっ―――。」 兵たちの静止も構わず劉備は馬を走らせ張飛の後を追って行った。 「くぉらぁ馬超ぉテメェ!」 馬超の後を追い張飛は血気盛んに吠えた。 馬超はチラッと張飛を伺い手に弓を掴んだ。 矢を取り急に馬を止めた。 そして弓を開き矢をセットした。狙いは張飛。 張飛が来るであろう的に矢先を定めて構えた。 「あのっ!弓と矢を貸して下さい。」 そばに立っていた兵に言った。 「は?弓矢なんてどうするんだ?」
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