第壱章/義勇軍

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「うえっ?!」 燎嵩は張飛の剣幕にビビる。 「こら!張飛やめないか、燎嵩を怒ってやるな。」 劉備が間に入って張飛を止める。 「だって兄者!このガキ2度も横やり入れやがったんだぜ!!」 「止さないか、私や張飛の事を思ってやってくれたのだ。今も護衛なしの私を追って駆けつけて来てくれたのだから、怒られる言われはないだろ?違うか?」 「そ、そりゃそうだけど。でもっ!!」 ギャーギャーと言い合っている光景に緊張感の無さを実感した。 完全に逸れたのだ。 馬超も戦意喪失してしまっている風で、溜め息を吐いていた。 「張飛!」 ああいえばこう言うという張飛に劉備は一喝して黙らせた。 張飛は劉備に叱られてしょぼくれていた。 そして馬超に向かい劉備はこう言った。 「私は、天下へ向かって仁義を旗印として今日まで生きて参った。それは一度たりとて欺いた事はない。馬超殿、此度は申し訳ないとは思う。私を信じて退いてはもらえぬだろうか?無論我々も引く。頼む馬超殿。」 劉備は馬超に頭を下げた。 誠意ある対応。 燎嵩は劉備に感激を覚えた。仁義それは昔日本人が一番大切にしていたものではなかったろうか。中国でもそれはなかなか見ることは難しい。 時代が人々を民を変えていってしまったのだろうか。 劉備の対応に馬超は一時躊躇していたが、仁徳の劉備を馬超も知っている。馬超は劉備を信じて軍を引く事を決めた。 「分かった。貴殿を信じよう。」 「馬超殿、有難う。」 馬超は軍を連れて去って行った。 一瞬、燎嵩をチラッと横目で見ていった。 「えっ!?」 燎嵩は驚いた。馬超が自分を見るとは思っていなかったのだ。馬超に見られ心臓がバクバクしていた。どう見たって馬超の目に入るようなクラスの人間ではない。 恨まれたのだろうか。燎嵩はショックを受ける。 「どうした燎嵩?」 「えっいえ、2度も邪魔したから馬超様に嫌われたのかと……。」 しょぼくれてしまう。 そんな燎嵩を劉備は優しく宥める。 「嫌うなら、燎嵩を面と向かって睨むはずだ。馬超殿にはそういったものは無かった。嫌われてはいないと思うよ。」 劉備が言った後張飛も燎嵩に言った。 「けっ、あの野郎が好きなのかよ。この燕人張飛様ってぇ強ぇぇ男がいるってのによ。」 ふん!とそっぽを向きながら言った。 だが、張飛がふとおかしな事に気付く。 「あれ?おめぇ何で馬超が好きなんだ?おかしくねぇか?」 燎嵩もマズいと気付く。劉備は気付いていなかったが。
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