第壱章/義勇軍

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「馬超は敵だろ?繋がりねぇし、会ったの二回くらいだろうが。」 張飛に突っ込まれる。 燎嵩は焦り慌てて言い繕う。 「えっだって、馬超様の噂を聞いて何だか劉備様に似てるなぁと。馬超様も仁義を貫き通す御方だとか。やっぱり好印象持ちますよね?」 さりげなく劉備に振り助け船を願った。 「なる程、それで馬超殿に嫌われたのかとしょぼくれていたのだな?馬超殿は意志の強さと誠意ある潔さを感じるな。仁義か。彼にあるならば私の元に引き入れてみたい。」 劉備も馬超に好印象を抱いていた。 燎嵩は劉備に付け加える。 「噂では、馬超様の一族は曹操により皆殺しにされたと耳にしました。曹操と対立している劉備様の下になら馬超様は来て下さるのではないでしょうか?」 燎嵩の言葉に劉備と張飛はギョッとした。 「燎嵩、君は一体何者なのかな?物事を深く知っているようだ。君は旅をしていたと言う。が、噂とはそこまで細やかに流れているものなのかな?」 「おい、ガキ何者なんでぇ!」 張飛に胸倉掴まれる。 -うわ~ん失言しちゃったよ~。どーしよー。- 内心かなり焦る燎嵩。 言い訳すら浮かんでこない有り様だった。 張飛が胸倉を掴んでいると襟が弛み胸板が出た。何故か張飛が胸板を見てギョッとした。 「??」 「お前、これなんでぇ。り、龍か?」 張飛が言ったので自分の胸を確かめる。 何の事だかさっぱり分からない。 胸を見ると龍の形をした痣があった。 頭を天に向け体をくねらせて指が五本あり四本の手足を開いた正に龍がそこにいた。 これは<昇り龍>と言うものだ。 五本の指のある龍は位が高い事を意味している。それには劉備も驚いていた。 「燎嵩君は……。もしかして龍なのか?それとも龍の使いなのか?」 話の方向がかなり珍妙な方向に行ってしまっている。 燎嵩は慌てて否定しようと喋ろうとしたら、張飛がシャットアウトした。 「兄者すげぇな龍が兄者の元にいるんだぜ。兄者の天下が約束されたって事じゃねぇのか?」 ますます飛躍していって弁解すら出来なくなってしまった。 「そ、そうなのか?そうなのだろうか……そうだったら喜ばしい事だな。」 2人して勝手に盛り上がっている。 早く誤解を解かなければ面倒な事になる。 「あ、ちょっお二人様っ待って下さい。」 慌てて否定を試みた。 しかし……。 「クソガキなんっつてすまねぇ。いや、すみません。えっと……。」 張飛が急に謝罪してきた。意表と言えば意表だった為呆気に取られた。
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