第壱章/義勇軍

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文官が息を切らして深々と礼をして入ってきた。 「何です慌ただしい。」 諸葛亮が諫めると文官は慌てて伝えた。 「馬超軍が張魯から離叛致しました。」 文官の言葉に驚いた。 何があったのか。劉備は戸惑いを表す。 「ふん!好都合だぜ。張飛様が攻めてやらぁ!」 張飛が鼻息荒く奮起した。が。 「何があったのです?」 「いえ、それがさっぱりでして、楊松の所にいたのですが、理由が分からないのです。」 文官の言葉に劉備達は思案する。 完全に張飛はシカトされていた。 燎嵩は蚊帳の外にいる張飛を見ると完全に悄げてふてくされていた。 「……………。」 確かに張飛の出る幕は今はない。 この話し合いの場には。 諸葛亮が劉備に言った。 「私が直接馬超殿の陣地に赴き、降参するように説得して参ります。」 劉備はそれに否を唱えた。 「ならん。孔明、お前は私の軍の軍師。お前にもしもの事あれば、私はどうしたらよいのだ。」 しかし諸葛亮は更に言う。 「馬超殿は今、完全孤立。何処へも行かれぬ身。我が軍の誘い悪い気はしますまい。私を手にかけたとて馬超殿には何の利害も生じません。大丈夫でしょう。」 「孔明、切迫した人間とは思いもしない事を仕出かす。行かせる事は出来ん。」 劉備の意見は最もだ。 燎嵩もそう思う。 人間を観察してきたからだろう劉備は人間の行動を把握出来ている。 その日は劉備は諸葛亮の申し出を良しとせず、終わったのだった。 翌日、昨日と同じようにまたバタバタと慌ただしい足音が近づいてきた。 「と、殿!綿竹より李恢と言う方が!!」 李恢…字は徳昂。 何故か燎嵩も会議の席にいた。 「張飛様、俺は何故にこの席にいるのでしょうか?参加するわけでもなく。」 張飛はその問いかけにこう返してきた。 「龍なんだ。兄者が同席させたんだから、居りゃいい。けっ、どいつもこいつも馬超、馬超って劉備軍にはこの張飛様がいるじゃねぇかよ!なっ、燎嵩。」 頭をクシャクシャされる。 ボサボサになる。直すのも何だからそのまま張飛と会話を続けた。 「だって、今、綿竹には趙雲様、黄忠様。荊州には関羽様、関平様、この霞萌関には張飛様だけですよ。確かに一騎当千の張飛様なら問題などありませんが、兵力増幅を図るには馬超様を得たいとの事です。目下は馬超様で、目先は打倒曹操でしょ?」 「そりゃな。分かってるんだけどよぅ。寂しいじゃねーか。」 天の邪鬼だなと思う。 「交渉だけでは無理ですから。」 ボソッと燎嵩は張飛に漏らす。
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