第壱章/義勇軍

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学校の終わりを告げるチャイムが鳴る。 生徒は早々に家路に帰る支度を始める。 友達同士仲良く連れ立って帰宅する連中、塾へ直行する生徒、教室を移動して別の所へ移動する生徒。 放課後だから行動は自由だ。 「家に帰っても誰もいないし、かと言って遊ぶ友達もいない。か。」 ノートに何気なく落書きをしていた。 毎日面白いわけでもなく、つまらない毎日が普通に過ぎていくだけ。 ため息が出る。 -学校に居ても変わるわけでもないな。帰るか。- 席を立ってバッグを持って教室を出た。 廊下には誰一人居なかった。シーンとした放課後特有の空気が漂っているだけだった。 一人で道草をしながら歩く。いつもと違う風景。多少の気分転換にはいい。 あまり来たことない場所だからか、発見する事があった。 いつも通る道とは違い簡素だけれど、静かで落ち着いた雰囲気があった。 たまに通るのもいいなと思った。 神社や小さいけれど公園同じ地域にいても、一歩裏路に入れば世界は変わる。 勉強ばっかで周りを見るなんて事は皆無であった。 「あれ?」 店らしきモノを発見した。 周りには殆ど店らしきモノは無いのに一件だけポツンと建っていた。 古い店である。 前々からあったのだろう、年期を窺わせる古さであった。 「何だろう、何の店なんだ?」 外装には何にも書いていないが、本らしいものは店頭に列んでいた。 「本屋?」 しかし、新刊本と言うわけではないだろう。 気になって近付いていく。 店の前まで来た。 中を窺うが、店員も店主もいない。 「放置?」 店頭に列ぶ本を見てみると値段は安かった。 「50円……。」 古本だから当たり前か。 しかし、とある有名大手の中古本屋とは違い、プレミアなどもこの手の本屋は付けるだろう。 店頭でそう考えていたら、店の中にあるとある本に気付いた。 「三国志か?アレ。」 思わず入ってしまう。 全部あるようだ。 珍しい。大抵は抜けている事が多いのに、ここは揃って売られているようだ。 「チラッと見るだけなら、大丈夫だよね?」 古本屋は、ある大手古本屋以外は立ち読み不可なのだ。注意されたり、追い返される。 その時は、その時だと開き直って三国志を手に取った。 パラパラとめくる。 なかなか年期があり、印刷も古さを窺わせた。 読めなく無い。 「でも、大事にされていたんだな。状態が差ほど悪くない。よっぽどの三国志ファンかもしれないな。」 初版を見ると昭和2年と書かれてあった。 戦時中である。
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