第壱章/義勇軍

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そんな馬超に李恢は溜め息をはく。 首を振り、毅然とした態度をとった。 「お言葉で御座いますが、馬超様は思い違いをなさっておられますな。」 「思い違い?」 「左様です。そもそも馬超様の父君は誰に殺されたのですか?憎き曹操ではありますまいか?」 「そ、そうだが。」 李恢の言葉につまる。 「劉備様は馬騰様とともに曹操を討たんと決起したお方に御座いますぞ、言わば同志に御座いませんか?父君の同志であらせられます劉備様を討つと言うのは、全くのお門違い。それに貴方は曹操に敗れて漢中に逃れ張魯に良いように使われ劉備様を討たんと攻めいられた。劉備様を討てば一番誰が喜ぶのかお分かりか?敵の曹操ですぞ!!」 李恢の言葉が馬超に刺さる。言葉を失う。馬超はうなだれて黙ってしまう。 「馬超様……。このままでは己の身を己自身で滅ぼしてしまいます。張魯の下にいた事で成すべき事が見えなくなってしまいましたか……。父君や一族の無念、このままでは晴らせませぬ。」 おずおずと伏せていた目を李恢に向ける。 「李恢殿……私はどうすればよいのだ。逆賊曹操さえ忘れ、父の同志である劉備殿を……。何ということを。」 「大丈夫でございます。劉備様は仁義に厚く賢者勇者を礼をもってお迎えくださるお方。馬超様の誠意を劉備様にお見せすれば、問題ありますまい。そしてお力を合わせ曹操を討ち取れば宜しいのです。万民の為に、父君の為にも。良いのです。」 李恢の言葉に馬超は決心したようだった。 馬超は李恢に劉備に合わせてくれと頼んだのだった。 2人は馬に乗り霞萌関へ向かっていた。 馬超は李恢にふと質問をした。 「李恢殿、劉備殿の下には弓の名手がいるのだな。彼は何という名なのだろうか?」 李恢は質問に首を傾げる。考えてみたが李恢も内部は知らないのだ。その質問に対してこう返した。 「その名手も劉備様にお聞きなさっては如何ですかな?馬超様になら快くお答え下さるでしょう。」 「そうだな。焦ぐ事はないな。私も劉備殿の下に行くのだ。共に戦う仲間なのだからな。」 頷く李恢。馬超と馬を並べ歩き霞萌関に到着すると劉備達が出迎えてくれていた。 劉備が馬超を快く出迎えた。 馬超も感涙し深々と礼をする。 「今までの所業お許し願いたい。」 「気にする事はない。そなたが来る事を願っておったのだ、さ、宴の用意ができておる。席へ参られよ。」 「……忝ない。」 劉備の優しさ、柔らかさに馬超は染み入った。
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