第壱章/義勇軍

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席に着き酒や食事、雑談に盛り上がる。 馬超も劉備との雑談に楽しんでいた。 部屋の隅にいた燎嵩が馬超を見ていた。 未成年なので酒は飲めない。 食事を口にしながら馬超の来訪に感激していた。 「馬超だぁ。すげぇ。」 「馬超が何だってぇ?」 燎嵩の後ろ襟を掴み自分の方に向けた。 「あ、ヒョウヒひゃま。」 口に物を含んでいるので言葉にならない。 「どいつもこいつも!ちっ。」 張飛が面白くないのも分かる。みんな馬超に向いてしまっているのだ。 吊り下げられながらも燎嵩はムグムグと食べていた。 「お前、根性座ってきたじゃねぇかよ。」 「ヒョウヒひゃまのおひゃけでふよ?」 そう言われ張飛の顔は引きつっていた。 馬超はふと劉備にある事を聞いた。 「劉備殿、お尋ねしたい事があります。」 「どのような事ですかな?」 「劉備殿の兵に弓の名手がおいででございましょう?」 劉備は馬超の問いにしばし考えた。 「弓と言えば、黄忠殿がいるな。しかし何故弓の名手を?」 「いえ、あの時の弓の腕、見事に御座いました。」 馬超の言葉に劉備はハッとする。 部屋を見渡す。すると張飛に襟首掴まれて吊られている燎嵩が目に入った。 「馬超殿。」 劉備が指をある場所に指した。馬超はその先を目で追った。 そこには張飛と、ある若い子供がいた。 「張飛が吊り下げておる子供があの時の矢をいった者だ。見覚えがあろう?」 馬超は燎嵩をまじまじと見る。確かにあの時矢を放った人物であった。 「彼は兵ではないのだ。ワケあって私の元にいて貰ったのだ。弓の腕は確かに見事なものだ。」 「ワケあってですか。」 頷く劉備。 「胸に天に昇る龍をもっておるのだ。痣にしては鮮明に浮かんでおるのでな、もしかしたら天が私の下に使いに出して下さったのではないかと思ってな。ま、私の思い込みだと言われたら、それまでだが。」 自分で言いながら苦笑していた。 劉備の言葉に馬超は驚きはしたが、鵜呑みにはしなかった。 天の使いとは信じられるわけがない。どこをどう見ても人の子である。 劉備が雑談の席でああ言うのだから張飛も知っているだろう、が、敬う気配は見る限り無さそうである。 吊り下げられているが本人の燎嵩も気にした感じは見受けられない。 「むぅ、張飛と気が合うのかのぅ。」 劉備の声に我に返る。 「は?」 「張飛ばかりが燎嵩をかまう。」 確かに張飛に頭をぐしゃぐしゃにされている。 張飛の腕を掴み頭から離そうとしてもがいていた。張飛がやっと手を離す。
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