第壱章/義勇軍

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「……………。」 燎嵩の頭は見事にボサボサになっていた。 周りにいた仲間達が一斉に笑った。 張飛も屈託無く笑う。 「不思議な子だ。来て日も浅いと言うのに、もううちの連中と解け合っている。あの張飛すらああだ。」 張飛は用心深い面を持っている。直ぐには信用しないのだが、燎嵩を初めて連れて来た時は多少疑っていたが、いつの間にか可愛がっていた。 「社交的な性格なのでしょう。羨ましいです。私には難しい。」 不器用と言っていいだろう。 口下手もある。 「武人によくある事ですな。言葉ではなく互いの腕にて語る。逆にそれは私には難しいな。」 馬超に向けて劉備が言った。 「口に出して語らずとも、腕が語る。と、張飛も関羽もそう昔言っていた事があったな。馬超殿、あそこには、その武人達がいる。気兼ねなく彼らと共に居てくれ。」 長い放浪の末に、馬超はやっと安心できる地を得た気がした。 馬超は劉備の下にいて武を奮う事を決めた。 劉備には不思議と人を惹き付ける魅力のようなものがあるのだろう。 遂に馬超が劉備の下に入ったのだった。 「アナタは大切な友だ。気兼ねなく接してくれ。」 劉備がそう言ったもんだから、馬超は友との言葉に気を良くして失言してしまった。 「ならば劉備、よろしく頼む。」 雑談にわいていた周りがシーンと静かになった。 劉備も目が点になっている。 そしてガチャーン!と何かが倒れた音がした。 それに伴い誰かを制止する声が複数聞こえた。 「ばぁちょぉ!!きさまぁ!兄者に今!何つったぁ!!」 何人か引きずって張飛が馬超の前まで来ていた。 かなり頭にきたらしい。 「ちょ、張飛っ!よいから!!」 劉備も慌てて止めに入る。 「馴れ馴れしいにも程があんだろうが!!何が劉備!だ。この野郎!殿様なんだよ!兄者は。分かったか!わきまえろい!!」 馬超の胸ぐらを掴む。 巨大の張飛を劉備や部下達ですら抑えられない。だが、そこへ助け舟が入った。 「張飛殿、馬超殿は今は客人です。今はね。ですから今は多目に見て差し上げて下さい。馬超殿、我らが君にあらせられます。今のかような言葉は宴での事、以後は無きようお願いいたしますよ?」 ニッコリと笑い、その場を抑えた。 「こ、孔明。」 「ちっ!」 さすがは名軍師であった。取り乱した状況でも慌てる事無く冷静に対処した。 「あまり知られてないけど、確かに馬超が劉備様を呼び捨てにして張飛の激怒をかったって逸話あったよなぁ。」
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