第壱章/義勇軍

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とんだハプニングに肝を冷やした燎嵩であった。 宴が終わり馬超は馬岱と話していた。 「馬岱、劉備殿の下で父の仇である曹操を討とう。仁君であるあの方ならば私は異論反論はない。」 「私もです。あの日から我らは曹操から追われ休まる日々などありませんでした、やっと仲間を得て進んでいけるのです。」 互いに頷きあった。 その時ジャリと小石を踏む音が聞こえた。 振り返ると張飛がそこにいた。 「!?」 「ちょ、張飛殿!! 」 二人は驚いたが、張飛の様子に顔を見合わせる。 「よ、よぅ。さ、さっきの席は悪かったな。だ、だけどよぅ兄者は殿様なんだからわきまえろよ。あ、いや、あの」 何をしどろもどろに言っているのか、植木の影で見ていた燎嵩はイライラしていた。 「ああ言った事は張飛は苦手だからな。」 後ろで声がしたので振り返ると劉備が立っていた。 劉備はシーっと人差し指を立てて、張飛らを見ていた。 「馬超、馬岱、お前らの事は軍師様と兄者から聞いた。兄者も曹操には何度となく命を狙われた。このままアイツがのさばっちまったら、この国は変わらない、いや、ますます悪くなるかもしれねぇ。頼む力を貸してくれ、曹操を討つ、兄者の大望の為に力を貸してくれ!」 張飛は言い切り自らの手を差し出した。 馬超は張飛の申し出に首を振り張飛の傍までくる。 「張飛殿、それは私たちから願う事。どうか私たちの力、武を劉備殿の為にお使い下さい。よろしくお願いします。」 ガッチリと張飛と馬超は握手を交わした。 離れて見ていた燎嵩達からも和解したことがわかった。 「一件落着だな。」 劉備がホッとため息をはいた。 「良かったです。」 燎嵩もこれで一応ホッとした。 一応ね。 「さて、憂いは除かれた。綿竹に戻るとするか。」 劉備はそういうと清々しい顔をして城内に戻っていった。 「綿竹。確か、趙雲と黄忠が守っているはずだな。」 張飛、劉備、馬超、諸葛亮、ここまでも凄い人物達と出逢っている。 趙雲。蜀にとってはなくてはならない武将の一人だ。 劉備の息子阿斗と妻が曹操の兵士達の最中に残された時、趙雲は一人馬に乗り救出に向かった。 そして敵を蹴散らしながら、夫人と阿斗を見つけ救出した。が、夫人は怪我をして動くのもやっとであった。夫人はこのままでは趙雲の足手まといと、自ら古井戸に身を投げ出した。 残された阿斗を懐に抱きかかえ趙雲は馬に乗り蹴散らしながら劉備の元へ走ったという。 長坂の逃亡の事である。
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