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言わないにしても、気持ちに何か釈然としない思いが生まれていた。
自分が孟達に関われば間違いなく歴史に触れてしまう。
そうなれば解釈はおろか、正史そのものが変わってしまう可能性が出てくるのである。
今は、今は孟達は劉備軍に従事している。
しかし。
燎嵩は言いようのない歯がゆさを覚えた。
孟達の人影が小さく消えて行くまで燎嵩は彼を見ていた。
いきなりガシッと髪をグシャグシャにこねくり回された。
「!」
この感触、この大きさ、この力、この荒さ。
「ちょ~ひ~さ~ま~ぁ。」
「なんでぇ、孟達までカッコイいとか言うんじゃねぇだろ~な?」
ボサボサになった頭のまま張飛に反論した。
「んなわけ無いでしょ。俺には、その気はありません。」
「あんだ?その気って?」
首を傾げられた。
アホな事を言った自分が恥ずかしく思えた。
「…………。何でも無いです。」
プイッとそっぽをむいた。
「なんでぇ。変なやつ。」
廊下での2人の声が聞こえたのか劉備が出てきた。
「何だ、廊下が騒がしいと思ったら、やはりお前たちか。」
やれやれと言った感じで言われる。
「おう、兄者。」
「張飛、明日は綿竹に戻るぞ。ここは孟達とカク峻に任せる。燎嵩、君も綿竹に来て貰うよ、いいかな?」
「はい。行きます。」
素直に返事をする。
不思議な人だ。劉備とは人を安堵させる。だからだろうか素直になってしまう。
「良かった。なら少し休みなさい。」
ボサボサの髪を劉備は直してくれた。
「やれやれ張飛か?ボサボサにしてしまって。」
「だってよぅ触り心地いいぜ。ついつい触っちまうんだよ。」
ヘヘッと笑っていた。
悪気はないのは分かっている。
張飛の性格や気性を分かっていれば無いと分かる。
「お前は気持ちいいだろうが、燎嵩は違うだろう?」
劉備は無意識に燎嵩の頭を撫でていた。
「……………。」
―言ってるそばから、劉備様よぅあんたもですかい。―
霞萌関には孟達とカク峻を残し、劉備率いる軍勢は綿竹を目指して移動が始まった。
燎嵩も歩兵と共に歩き綿竹へ進む。
度々張飛が燎嵩を気にかける。
何故か馬超も話しかけてきた。
「綿竹まではかなりの距離、大丈夫なのか?兵士と違い、体力がなさそうだ。」
―馬超様、正解。ですがあなた方と一緒にされても困るなぁ。―
馬超に作り笑顔だがみせて微笑んだ。
「体力はさすがに保証ないですけど、綿竹まで頑張って歩きます。」
「しかし……。」
後ろから馬岱がくる。
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