第壱章/義勇軍

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「燎嵩殿がへばれば私の馬に乗せます。」 「馬岱。私もそうしよう。」 2人頷き合っていた。 燎嵩は馬超と馬岱2人にかなり心配をされていた。 「申し訳ないよぅ。」 ボソッと燎嵩は呟くようにもらした。 時折チラチラと張飛が燎嵩をうかがって見ていた。 ―う~わ~俺って皆様方に気ぃ使わせちゃってる― 余計申し訳なさがこみ上げた。 ふと、燎嵩は不思議と思った。馬超と馬岱が話しかけてきた事だ。 アレから会話などしていない。 が、何故か話しかけてきたのだ。心配っちゃあ、心配でかけてくれたのもあるだろうけど、それにしたって不思議である。 張飛が話しかけてくるのは分かるのだが。 自己紹介すら馬超、馬岱の2人にはしていないのに名前まで知っていた。燎嵩は馬に乗ってはいるが、隣にいる馬岱に何気なく聞いてみた。 「あ、のっ。」 馬岱はニッコリ笑って燎嵩を見た。 「はい。」 「不思議に思ったのですが、お2人は何故、私の名前を知っておいでなのかと………。」 燎嵩の質問に嫌な顔一つ見せず馬岱は答えてくれた。 「私の場合は兄者馬超からお聞きしております。弓の名手だそうですね。兄者馬超も感嘆しておりました。」 馬超が感嘆していたと言われて燎嵩は驚いた。父や祖父からはまだまだと日頃からよく言われていて、自分でも未熟者だと認識している。 三国志の世界は戦乱の真っ最中。武断派の人間からすれば腕のあるないは見て取れるはず。 だから、馬超が燎嵩の腕を感嘆していた事実が燎嵩には信じられなかったのだ。 「弓はまだまだ未熟者ですから、誉められた腕ではないのですけどね。」 燎嵩の謙虚な言葉に馬岱は感心した。 「燎嵩殿、自信がなくては弓から矢は放てません。どこに飛ぶか、どこに当たるのか、分からなければ弓を使う意味はありません。燎嵩殿はお分かりでいらしたから弓から矢を放ったのではありませんか?兄者馬超は見ております。見事だったからこそ誉めたのです。」 家族の評価と他人の評価は必ずしも一緒とは限らない。 それが馬岱の言葉だ。 家族で師範である燎嵩の祖父と父親。甘さがないのはいいが、門下生よりは厳しいものはある。 道場が休みの時は普通やらない流鏑馬を習い、実践していた。 馬と人間の息が合わなければ弓を扱う事すら難しい。 タイミング以前に体勢を維持するので精一杯だ。弓は普通は高台の上、砦、櫓などの上で的を狙って撃つものである。 移動しながら撃つものではない。
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