第壱章/義勇軍

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劉備は生首を目の前に酒をあおった。 燎嵩は思った。ほとんど日常となっているから麻痺してしまったのだと。 最初は劉備とて燎嵩の反応と同じであったろうに。 乱世とは人を変える魔物である。 「殿、失礼致します。」 馬超が劉備に向けて手を前に組み返答を待った。 「馬超?どうしたのだ?」 馬超は馬岱と顔を見合わせ、再び劉備に向き直った。 「はっ、私と馬岱とで成都に赴きまして劉璋に会って参ります。あの張魯の野心、劉璋に話してみようと思います。殿との戦の愚かさを説いて参ります。」 馬超の進言に劉備は諸葛亮にどうか?と聞いた。 「私も馬超殿の意見に同意します。」 諸葛亮も馬超に賛成した。だが諸葛亮は馬超に言った。 「貴方の言葉に耳をかさねば、こうしなさい。いいですね?」 と。馬超達に策を授けている様だった。それに馬超と馬岱は頷いた。 燎嵩はただ、ただこの血生臭い戦が終わる事を願わずにいられなかった。 また生首が前に並ぶ事だけは避けたいのだった。 しかし目の前には劉シュンと馬漢の生首だけは現実として置かれていたのだった。 ―俺もなれは慣れちゃうのかなぁ― 蜀・成都 馬の旗がはためいていた。 馬超、馬岱の軍団が成都にいた。 その模様が成都の城楼から見えていた。 「馬とは?!」 「馬一族、馬超の軍団でございましょう。」 劉璋は馬超達を見て焦る。 「何故馬一族がワシの城に来るのだ!?」 「確か、馬超は張魯殿の下に身を寄せていたはずですが……。」 「ならば、何故城を取り囲む必要があるのだ!明らかに敵意ではないのか?!」 そうこう家臣とやりあっているうちに外の馬超から声が張り上がった。 「太守劉璋に申し上げる!!」 再び馬超らを見やった。 「劉璋殿、貴殿は張魯の軍団を待ち城に籠もっておいでだろう、が、いつまで経っても張魯の軍団など来はしない!」 馬超の言葉に城内がざわめく。 「いや、来たとてヤツは蜀など救いはしないだろう。それどころか、蜀を我が物にせんと奪いに来るやも知れん。」 劉璋は馬超に向かって反論した。 「でまかせを言うな!」 馬超はそれにひるむことなく続ける。 「張魯には野望がある。それは貴殿の考えが及ぶものではない。この馬超ですらあヤツを見限り劉備殿に従ったのだ!嘘ではない!!野望の為ならヤツは裏切りすらじさないでしょう。」 劉璋の顔は青ざめていた。馬超の言葉に絶望感を見たのだった。 「私はヤツの下にいたので分かるのです!」 劉璋は眩暈を覚える。
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