第壱章/義勇軍

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「劉璋殿!私はヤツに拾われヤツの手となり戦っていました。しかし、都合が悪くなった途端私は無理難題を突きつけられ、亡き者にされる所でした。そこに劉備玄徳が現れ敵対していた私を無償で受け入れてくれたのだ。私も貴殿も謀られたのです!」 ついに立っていられず、家臣に抱えられ城内へ入っていった。 「殿………。」 「孤立無援か……。」 力無く床にヘタレ込む。深くうなだれた。 城の外では馬超達が劉璋の返事を待って陣に留まっていた。 「兄者、劉璋は降ると思えますか?」 馬岱が馬超に聞いた。 馬超は顎に手をやり考え込む。 「――降る、いや降らざる得ないだろう……な。張魯がくれば命の保証などないだろう。」 「しかし、劉璋と言う方は優柔不断だとか。決心できますかね?」 馬岱の言葉に馬超の眉間にシワがよった。 「殿、あの馬超が劉備玄徳に降ったのです。蜀が戦場になるのは、何としても避けねばなりません。彼なら戦場になどしますまい。民も命も大事に考えてくれましょう。」 文官の1人が劉璋に説いた。 しかしそれに即座に反論がきた。 「ならん!流浪の身分で草履売りの者などに我々は仕える気などない!」 それからは言い合いが続いた。 しかしその最中でも蜀から逃げ出す部下たちが相次いだ。 答えの出ない言い合いに劉璋は諫めることなく鬱ぎ込んでしまう。 そんな姿に家臣たちは舌打ちさえ出た。 「結局行き着く先は二者択一。降伏か、玉砕かだ。それすら決心できんのか。」 馬超らは陣にて蜀を見ていたら蜀から逃げでてくる人物の影が幾つも見えた。 「逃げてますねぇ。」 馬岱がやれやれな感じで見ていた。 「――――人望のない証拠だな。時間の問題だろう。」 冷ややかで冷静な判断の言葉であった。 門が開いた。 「あれ?兄者、門が開きましたよ。」 「何だ!?」 文官らしき人物が出てきた。馬超の下に歩いてくる。 「こっちに来ますね。もしかして使者でしょうか?」 馬岱の見解に馬超も頷いて、その人物を待った。両方の腕を上げて頭を低くして馬超らの陣に来た。 「劉璋殿から劉備玄徳様への言伝が御座いまして参上仕りました。」 丁重に馬超らは文官を出迎えた。 文官の言葉を聞き馬超はホッと安堵の息をついた。 「では、殿の下へ。」 劉備の綿竹関に劉璋の使者が訪れた。 そして劉璋が降伏した事を伝えた。 「………ようやく蜀が殿の物になりましたね。」 諸葛亮がにこやかに笑い劉備に言った。 うんうんと頷き劉備はホッとした顔になる。
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