第壱章/義勇軍

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確定した足場なら迷ったり、模索したりしなくて済みます、危険もないですよね。でも約束された明日なんてありません。皆不安定な足場で迷い、考え、模索して踏みしめて得ていくんだと思います。確かな足場を。祖父が言ってました。約束、用意された未来など何の価値がある。成長せんし、堕落していくだけだ。先が分からんから進んで行ける。不確かだからこそ成長する。未来を得る為にな。必死になる。命ある限りもがき生きるが人間だ。と。」 「なる程。通りだ。」 長々と話した内容を劉備は面倒な顔を見せず聞いてくれた。 その上同意まで。 こういった大人いないよね。嬉しくなる。 親すらシャットアウトするから、子供の意見主張など無いに等しい。 でも劉備玄徳の人柄なのかもしれない。 ニコニコと笑みを浮かべ劉備は燎嵩の頭をワシワシなでた。 「燎嵩は恵まれ、幸せな家族を持っているのだな。私にも母がいた。とても厳しい人であったが、気丈な人であった。母がいてくれたからこそ、今の私があるのかもしれん。」 父親の死後、女手一つで劉備を育てた人。 貧しい育ちであったが、劉備は学術より武術などに興味を持ち大望をいだいた。 子供の頃から活発で外で遊び回っていた。 草鞋を作り、売りながら生計を立てていても、世に出て一旗挙げたいとの思いは決して消えていなかった。 そんな時に関羽や張飛に出会った。そして3人で歩み始めた。 武力は関羽、張飛、趙雲らが際立っていて、君主である劉備は微々たる武力だと思われがちだが、実は劉備もかなり強いのだ。で、なければ義勇軍で各地を転々とする中の劉備に生き残るなど乱世ではまず有り得ない。 兵法も心得ていたのもある、各地では劉備は戦いに殆ど勝利を納めているのである。 「劉備様は曹操や孫権が及ばない経験や知識をお持ちですから、杞憂なさらず前を見て下さい。」 「そうしよう。」 劉璋を振威将軍に封じた。妻子と一族共に蜀を出て荊州南郡に異動となり余生を過ごす事になった。 劉備は恩爵授与大令を発令。 譜代は勿論だが、劉備に従う諸将にも奉爵、行賞を出した。 蜀の民に対する施しも劉備は行った。 劉璋に苦しめられ分、彼らに善政を布いたのだ。 蜀は新しい君主に喜び沸き立った。ようやく劉備は蜀の君主として腰を据えたのだった。
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