第弐章/三国鼎立-混沌の始まり

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民もまた国の為にと奮い立ってくれるものだ。 法律は民を守り、国防にもなる。 必要不可欠である。 燎嵩は最近胸の痣に違和感をおぼえてきた。 時々熱を帯びるのだ。 痛みすらある。 布を濡らし痣に充て冷やしたりとしていた。 鏡を見て痣を確認する。 「あ………。」 なんと痣が前より鮮明に龍を浮き上がらせていた。 鱗、髭、角、牙、爪と見える。 色まで浮かんできそうだった。 「一体何なんだ、この痣は。」 意味が分からず困る。 生まれつきではない為、元は無い痣があるのは不思議と言うより気持ち悪いものだ。 目の色も茶色だったのに金色に近い。 首を傾げる。 その時誰かのくる気配がした。 くる方向に顔を向けると趙雲がいた。 「おや?確か、燎嵩殿では?」 「あ、はい。趙雲様ですよね?」 「ええ、此処で何を?」 趙雲が不思議がるのも無理はない。 鏡を持って中庭に一人ポツンといるのだから、当たり前である。 「あ、いえ、その……ちょっと……。」 趙雲に会って舞い上がってしまう。 燎嵩の手には鏡がしっかり握られていて趙雲は何かを思ったようだ。 「身嗜みも大事、だれか好きな女子でもおいでかな?」 あらぬ誤解である。 燎嵩は首を振る。 「あ、痣を……。」 「痣?」 燎嵩は胸の痣を趙雲に見せた。 趙雲は痣を見て感慨深げに頷いていた。 「コレは見事な龍の痣。初めてみる。しかし痣?なのか?やけに生々しく形が出ているが……。」 「最初気づいた時は龍?に見えるかな?程度のものだったのですが、最近ははっきりと龍だなと思える程に浮き出てきたのです。」 まさに彫られたような龍の造形に見事さを感じた。 「目の色も茶色だったのに金色になってきていて。劉備様も龍だと信じてしまってまして。」 諸葛亮孔明に至っては燎嵩を龍とは思っていないだろうが、一応龍にしておいた方が都合上良いとしているのだろう。 誤解してほしくないので趙雲にはありのまま言ったのだ。 「人間が龍になるなど信じていない。龍は神だ、怖れ多い。しかし我が殿が信じているとは。」 苦笑していた。 劉備の心境はかなり追い詰められ焦っていたのだろう、何かに縋らねば精神的に辛かったのかもしれない。そこに燎嵩が現れ不思議な痣を持っていた為に縋ったのかもしれない。 「皆様に龍、龍と紹介なさいますので、趙雲様、どうしましょう。」 龍と信じている為劉備は燎嵩を荊州まで連れてきてしまったのだ。 オマケに張飛も受け入れてしまっている。
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