第弐章/三国鼎立-混沌の始まり

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黄忠が感心した。 そりゃ子供一人旅なんて珍しいんだろうが、実際は旅なんざしていない。燎嵩自身あの場所にポッと現れたと言った表現が妥当だと思っている。 「休んでいた場所に張飛様達がいらっしゃったので驚きました。」 実際驚いた。 だって馬岱が去った後張飛に見つかり捕獲され、その後に馬超との一騎打ち。三国志好きなら特等席にいたと思う。 「ほほぅ。男と男の一騎打ち、えーもんが見れたのぅ。見応えあった事だろぅのぅ。若いとは羨ましいもんだ。」 ガハハと豪快に笑っていた。 ―いや、貴男は若くなくても凄いんですって。羨ましいなんて、思われなくてもよろしいかと― 燎嵩は心の中で突っ込みをいれた。 「そう言えば、燎嵩殿は弓がお得意だとか。張飛殿から伺いましたが。」 趙雲が弓を引く動作をしながら燎嵩に尋ねてきた。 弓と聞いて黄忠も反応を示す。 「あ、はい。幼い頃から祖父と父により教え込まれまして。でもなかなか上達せず怒られてばかりで。」 えへへと笑う。 「なんじゃ、ワシに一度見してみぃ。見てやるわい。」 黄忠がズイっと出てきて燎嵩に詰め寄る。 「え、ほ、本当ですか?!」 嬉しくなる。弓の黄忠に手解きを受けられるなんて、何てラッキーなんだろう。 「なんじゃ嫌なんか?」 「いえ、逆です。嬉しいです。是非ともお願いします!」 燎嵩の心が躍る。 燎嵩の素直な喜びに黄忠は鳩が豆鉄砲喰らったような抜けた顔になった。 「ホントに素直な子ですね、黄忠殿。お弟子さんができましたね。」 趙雲は笑って黄忠に言った。 「ん~じゃがぁ弓だけでは生き抜いてはいけん、趙雲殿は槍を教えてはどうじゃ?」 黄忠は趙雲にいきなり振る。 びっくりしていたが、趙雲はニコッと笑い顎に指を当てて考える風にして言った。 「私が教えるよりは黄忠殿は武勇もあり腕もあるお方、いっそ剣、槍いずれかを弓と共に教えられれば宜しいのでは?」 その答えに黄忠は腰に手を当てて痛たたたぁと仮病を使った。 「と、年寄りに何でもかんでもとは酷じゃぁぁ。趙雲殿ぉ頼むのぅ。」 「…………。」 素直に手伝ってって言えば済むのではないのかと2人は思った。 あえて言わなかったが、年を取ると素直になれないとはホントのようだ。 ふぅと息をはき趙雲は仕方なさそうに承諾した。 「分かりました。やりましょう。燎嵩殿さえよろしければお教えします。どうですか?」 趙雲に聞かれ燎嵩は戸惑った槍までとは思わなかった。しかし趙雲だし。
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