第弐章/三国鼎立-混沌の始まり

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燎嵩はやってみようと思った。 「才能が無ければ護身の程に手解き願います。」 「分かりました。」 趙雲に申し訳なく思う。蜀の地を得たとはいえ、まだ戦が終わったわけではない。趙雲は劉備が死んだ後も諸葛亮の片羽として戦場を駆けている。 「燎嵩とか言うたかのぅ。明日ワシが直々に弓を手解きしてやるわ。」 さっきまで腰が痛くて弱っていたのではないか、元気に仁王立ちしていた。 「……お願いします。」 燎嵩の肩に趙雲が手を置いた。 何だろうと趙雲を見ると趙雲はにっこりして燎嵩に言った。 「ご老体ですが、腕は確かな方。厳しくもありましょう。よく見て学び、会得していくとよいでしょう。」 「はい。」 「何でぇ黄忠の爺さんが燎嵩の先生だとぉ?!んで趙雲が槍の先生ぇ!?俺様抜きでか!」 ドスドスと足音とお腹を揺らして燎嵩達のいる場所にやってきた。 そこには大きな弓を開き矢を引く燎嵩がいた。 弓の大きさに張飛は驚いた。 自分たちが使う弓よりデカい。 それを燎嵩が扱っていた。 燎嵩の手から矢が放たれた。 矢は見事に中心を射る。 やはり弓が大きいだけあり力の度合いも大きいのだろう藁人形が矢と共に吹っ飛んだ。 自分より遥かに小さく細い燎嵩が大きい弓をしならせて矢を射っている。不思議というか奇妙な光景だった。 「燎嵩、その弓は何だ、デカすぎやせんか?だがそれでよう撃てるもんじゃのぅ。」 黄忠が感心していた。 「コレは倭の国の弓で、倭の国ではこの大きさが普通なんです。俺もコレで祖父から手解きを受けました。ただ、この弓よりかなり力がいるのが、厄介でもありますね。」 中国で使う弓は日本の弓より小さい。 あまり力がいらず、構えればスッと開く。 しかし日本の弓は力がいる。グッと力をいれなければ上手く開いてくれず逆に弾かれて怪我をしかねないのだ。 黄忠が興味をそそられたのか燎嵩に貸してみろと弓を構える。 燎嵩の言う通り、今まで扱っていた弓の要領でやっていたら燎嵩の弓は開かなかった。 「なんつぅ硬い弓じゃ。」 実際に使って黄忠も驚いていた。 再び力を入れて弓を構えた。 ギリギリと軋む音をたて弓を開く。 指を羽根から離し矢を放つ。 ピュッ!!と音を立て藁人形ごと勢い良く持って行った。 「かなり威力のある弓じゃ!こりゃスゴいわい。」 つまり燎嵩の腕と胸筋はこの弓を開く力を持っている事になる。 「細っこいのにお主やるのぅ。」 黄忠に誉められた。
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