第弐章/三国鼎立-混沌の始まり

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「じゃが、こっちの弓に慣れとかんとダメじゃ。こっちが主流じゃからのぅ。」 黄忠から弓を受け取る。確かに日本の弓より普段の弓が主流だ。 扱えないわけではない。違和感が多少あるのだ。だが、それは通らないだろう。命のやり取りをしている世界だ。 慣れる事が優先だ。 燎嵩は弓を構え、黄忠の指示通り弓を開き矢を放つ。 「弓の経験がおありなだけありブレることなく的に当てる。さすがですね。」 遠くから燎嵩を見ていた張飛に後ろから趙雲が話しかけてきた。 「はっ!俺様と馬超のやり合いを弓一本で鎮めやがったんだ。下手っぴなわけねーだろ。こりゃ馬超も同じだろ。」 二度も止められたのだ。偶然ではない。 「二度も?」 「カ萌関の砦で一回。外で一回。どれも弓一本でだ。馬超にも聞けば同じこった言うぜ。経験者って言うより黄忠爺さんと同じ腕あんじゃないのか?」 教える黄忠も腕のいい燎嵩にご満悦な感じだ。 楽しそうに教えている。 「師弟つーよりお爺ちゃんと孫じゃねーか。」 張飛の言うとおりそんな感じだ。それには趙雲も苦笑せざるえなかった。 「そーいや趙雲おめぇは何でいやがんだ?」 「私は槍を燎嵩殿に伝授する為にいるので。」 その言葉に張飛はズイッと出た。「そんなら俺も混ぜろ。」 半ば強引だったが、実戦的なスタイルも必要だろうと趙雲は思い承知した。 「ですが、細身ですから無茶はしないでくださいね。まだ子供ですしね。」 「わかったわかった。」 趙雲の忠告に手をヒラヒラさせて了解した。 黄忠の手解きを終えて槍に持ち替えると趙雲だけではなく張飛が並び立っていた。 「え?どーして?」 普通に疑問に思って口にしてみれば張飛がガシッと頭を鷲掴みした。 「今日から俺様も指南役な。よろしく頼むぜぃ。」 ニャッとされた。 青ざめた顔で趙雲に向き経緯を求めた。 「………き、基礎だけでは心許ないかと思い、実戦的な形もと――すまない。」 さすがに悪かったと思ったのか陳謝された。 「趙雲始めっぞぉ!」 やる気満々な張飛に燎嵩は筋肉痛を余儀なくされ、青あざも覚悟を決定付けられた。 「と、とりあえず基礎からいきましょう。ね、燎嵩殿。」 趙雲に頷き肩を落としながらも素直に張飛の元に向かった。 通路を通りかかった馬超が燎嵩らを見かけた。 黄忠が椅子に座り燎嵩らを眺めている。 「黄将軍、彼等は何を?」 馬超に気付き黄忠はニッコリと笑う。 「あの童の槍指南じゃ。最初は趙雲殿だけじゃったがのぅ。」
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