第壱章/義勇軍

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戦してた風でもねぇし、なんてか貧弱なヤツだなお前よぉ。」 ブラブラと軽々振り子のように振る。 確かに筋肉あんまりない。 「下ろして下さい。」 貧弱な声が出てしまった。 「なんだぁ喋れるじゃねーか。ま、いいか。」 何がいいんだか分からない。自己完結してしまっている。 下ろしてくれるかと思ったが、そのまま何処かへ連れて行いかれた。 「!?」 ドスドスと足音をたて、メタボな腹を揺らし、砦?いや関だ。そこへ入っていった。 「あ~にじゃぁ~!」 あにじゃ? ヒゲおっさんが大声で呼んでいた。 「張飛?」 上から声がして来た。だが抱えられている態勢では上を伺い知る事は出来ない。 ん?待てよ?張飛? ヒゲおっさんの顔だけは見られるので、クィッと顔だけヒゲおっさんに向けて見た。 ジィッと見てみれば、さっき馬岱とやり合ってた張飛だった。 自分でもそう認識していたハズである。 が、本人が目の前に来たら忘れていただけではなく認識してすらいなかった。 つまり、経歴、年表、史実からただ見ていただけだったのだ。 「なんでぇ、人の顔ジロジロ見やがって。」 覗き込まれる。 迫力がある顔だ。 「あ、すみません。」 大人しくぶら下がる。 「小せぇなぁお前。細いしよぉ。何だこの骨と皮しかねぇ体はよぅ。」 腕を掴まれ指摘する。 コレでも運動は得意で、足は速いし、習い事は弓道をしている。 アーチェリーとは違い弓道は弓がデカい分難しい。腕力や胸筋、握力が必要となる。 「……………。」 そんなに細いかなぁとショックを受けた。 「張飛!?どうしたんだ?!その者は?」 優しそうな顔をした人物が覗き込み様子を窺ってきた。 「いや、よぅ、草場の影にいて、怪しかったから捕まえてきたんだよ。」 張飛の言い分を聞いて、自分が不審者だとされたのだと知って更にショックを受けた。 「張飛、私が見てもこの者は別に怪しいといった類ではないと思うが?」 「確かにそうなんだけど、ここらにいるのは兄者の軍と蜀の軍だろ?俺は見たことないぜ?このちんちくりんは。だったら蜀のヤツだと思うのが当たり前になるじゃねぇか?」 通りを得ている。 けれども、劉備の言葉に驚きもした。 「蜀の民なら尚更失礼な事はできん。いつまでもぶら下げていては可哀想だ。下ろしなさい張飛。見たところ武器の類も抵抗もない。放しても大丈夫だろう。」 劉備の言葉に渋々だが、従い下ろす。 劉備が覗き込み問うてきた。 「お主、名は?」 「…………。」
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