第壱章/義勇軍

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劉備の顔を見て驚いた。史実、マンガ家、人形劇などで多くの顔を見てきた。だけれどそれらには全く当てはまらないのにビックリした。 普通のオッサンだったのだ。 自分の親父の方がイケメンと言える。 いきなり頭をガシッと掴まれた。 「兄者が名前を聞いてるんだ、答えろっての。名前くれぇあんだろ?」 殆ど脅しに近い。 張飛の迫力に圧されて慌てて喋る。 「あ、燎嵩です。」 「リョウスウ?それが、そなたの名か。」 地面に石で漢字で名前を書いた。 「なる程、燎嵩か。良い名だな。」 頭を撫でてくれた。 何でかは分からなかったが、頭を撫でられて嬉しく思った。 こっぱずかしくもなる。小さい頃以来撫でられた記憶は無かった。 成長しても撫でられれば嬉しいものである事を知った。 「なんでぇ兄者に誉められて喜んでやがる。変なヤツだな。」 「張飛!」 窘められて張飛はそっぽを向く。 ホントに張飛は子供っぽい性格をしている。 それは史実と間違いないようだ。 「して、燎嵩。そなたは蜀の民なのか?」 劉備は尋ねた。 「いえ、俺は蜀とは関係ないんです。道に迷って此処にいただけで、怪しまれても致し方ないと思います。」 本当の事など言ったら尚、混乱を招くだろう。 実際自分自身何故此処にいるのかさっぱり分かっていないのだから。 無難に答えておくのが得策だろう。 「おい、ホントに道に迷ってあそこにいたのかぁ?俺らの様子を窺っていたんじゃねーだろーな?」 いやあながち間違いない、歴史上の人物がガチンコしていれば後世の人間はマジマジ見るだろう。後世の人間にとれば感動的な事でもある。 「誰でもあそこで戦いをしていれば、身の安全を考えて過ぎ去るのを待つかと思いますよ。」 まさか反論するとは思っていなかったらしく、張飛はビックリしていた。その上言い返せない反論だった為、張飛は口を噤んだ。 「張飛を言い負かすとは、凄いな。そなたの言う通りだ。普通ならそうして当たり前だ。」 「俺は戦いなんて無縁の人間ですから、好き好んで近寄って行きません。」 自分の生まれた世界は平和な世界で、戦争とは無縁である。 確かに自分の生まれた国を出たら未だに戦争をしている国々は存在しているだろう。 「すまなかったな、疑ってしまった事を許してくれないかな?」 何故か張飛の非を劉備が謝った。 本来なら張飛が謝るべきものを劉備は代わって謝罪したのだった。 「兄者!」 謝る気はないのだろう。いや、非は無いと思っているのだろう
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