第壱章/義勇軍

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張飛は納得しかねていた。 劉備が張飛に何か言いかけたその時であった。 「張飛とやらは何処にいる!?我は、馬超なり!どうした臆したか出て来い!!」 外で大声を張り上げて張飛を挑発する声が上がった。 その言葉に張飛は怒りを露わにして矢倉の上に颯爽と上がっていった。 「どけっ!野郎言わせておけばぁ!」 「張飛っ!」 劉備が張飛を呼ぶが張飛は聞かず矢倉の上に仁王立ちしていた。 「馬超って西涼の錦馬超か。」 何気なくボソッと呟いた。それが劉備の耳に入ったようだった。 「そなた馬超を知っておるのか?」 劉備の言葉にハッとした。 「あ、いえ、馬一族は勇猛な武将で有名ですから、旅していたとて耳にその噂は入ってきます。」 慌てて言い繕った。 実際会った事なんてないわけで、三国志で読んで知ってるだけなんて言っても通じない。 上の方で張飛が大声を張り上げて外の馬超に言い返した。 「てめぇが馬超か!!そこで待ってやがれい!燕人張飛様が相手してやらぁ!!」 矢倉を降りてドカドカと愛用の蛇矛を手にし外へ出ようとした。 「駄目だ張飛出てはならん!」 ビシッとした声で張飛を制した。 「何で!?奴はそこにいるのに!」 「今日は出てはならん!」 劉備の許可が下りないと分かったのか張飛はショボンと両肩を下げて地べたに座った。何だか怒られた子犬を思わせる形で苦笑してしまう。 ふぅと溜め息を吐く劉備。苦労性と言うのも本当のようだ。 「燎嵩、君は中に入っていなさい。誰か、彼を中へ連れて行きなさい。安全な場所にいるといい。」 ニッコリと笑って気遣ってくれた。 確かに足手まといであって非力で何も出来ないから居ても困る。 素直に兵に連れられて中へ入った。 外の馬超も張飛が出て来ないと分かったのか、引き上げていったようだ。だが翌日も馬超はやって来た。 「史実通りだ。」 危ないと分かりながらも、兵に紛れて関の外を窺った。 「我は馬超孟起なり!張飛今日も出て来ないつもりか?!臆したか張飛!」 馬超の声が響く。 「兄者ぁ!!」 張飛は劉備に纏わりつき出撃を願い出ていた。 やれやれと言った顔で劉備は張飛の肩に手を置き頷いた。 「行ってこい。今日は止めぬ。思う存分やってこい。」 「兄者ぁ!!うっしゃあ!待ってやがれぇ馬超ぉ!!」 劉備の許可が下りてやる気満々の張飛は肩をクルクル回して鼻息を荒く吐き出していた。 馬を駆り張飛は関の門を開けて馬超と対峙した。 そこには堂々たる姿をした馬超がいた。
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