第壱章/義勇軍

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「へへっ待たせたな。改めて名乗らせて貰う。おりゃぁ張飛だ。」 「……我が馬一族は公侯の家柄。貴様のような田舎の匹夫に名乗る名など有りはしない!」 馬超はピシャリと言い切った。 -もしもし馬超さ~ん。前日アナタ名乗ってらしたじゃありませんかぁ?- 思わず心の中で突っ込みをする燎嵩。 「てめぇ馬鹿にしやがってぇ!!家柄が関係あるかぁ!!」 見下された言い方に怒り心頭になり張飛は馬超に向けて蛇矛を突き出した。 馬超の槍が蛇矛を受ける。 金属の鈍い音が響いた。それが、開戦の合図になり二人は一騎打ちに入ったのだった。 何度も何度も互いの武器がぶつかり合い互いの鉾先をかわす。 「馬に乗りながらよく戦える。すげぇ。」 ゴクつばものだ。 燎嵩だけではなく兵達も固唾を飲んで2人の勝負を見ていた。 馬が疲れてきたのか、汗を身体から散らしていた。息も荒い。 「馬の方が限界だ。」 動きが鈍くなりあまり動かなくなった。 それに馬超も張飛も気付いたのか、馬から降りて周りの兵に新しい馬を催促していた。 今まで乗っていた馬は相当限界だったらしく、倒れた。 新しい馬が来て乗り、また勝負が始まった。 馬から降りて一騎打ちやればいいのにと思う。 しかし何時まで見ていても勝負がつかない。 「本当に互角なんだ。馬超もすげぇ。」 互いにかなり乳酸が溜まってきたのがわかった。汗に動きが鈍くなった。チアノーゼも見えている。 現代的医学から見れば止めねばならない。 酸欠は脳によくない。 史実なら劉備が止めるハズだけど……。 劉備を見るもオロオロしてうろたえていた。 「何をしてるんだよあの人はぁ。」 -張飛も馬超も死んじゃうだろっ!- 劉備の下に行こうと移動する。 兵を掻き分け劉備に向かう。 劉備が視界に入った。 「劉備様!2人を止めて下さい!あのままでは死んでしまいます!」 劉備はどう止めていいのか分からないようだった。いやタイミングの問題だろうか。 後ろにいた兵が弓矢を所持しているのが目に入る。もう一度馬超達をみて兵から弓矢を奪い取った。 「燎嵩?!な、何を!?」 「2人の間に放つのです!外野から手が入れば、気が逸れて止まるでしょ?」 弓をしならせ弦を張らせ矢を2人に向ける。 キリキリと軋む音が鳴る。 気を集中させ目標を定める。 ピィ―――ンと精神が起ち指から羽根を離した。 ピュッと矢が放たれていった。 その矢は見事に2人の間を抜け兵の盾に当たった。 「!?」
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