少年

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「うぁあああぁああ!!」 自分の叫び声で目が覚めた。 狭い場所で起き上がったせいでガツン…と頭を何かに思いきりぶつけた。 ぶつけた頭がズキズキと疼く。 疼く頭を右手で擦り、擦ったその手が震えている事に気付いた。 よく見ると震えているのは手だけじゃない。 全身がカタカタと震え、鼓動もドクドクと異様に速い。 けして寒い訳じゃない。 この時期は朝から気温が高く、この小さく狭い空間はさらに暑さを増し蒸し風呂状態だ。 嫌な汗が背中をじっとりと濡らす。 結局昨日、家には帰れなかった。 死神の少女に記憶を奪われ不思議なタマゴを渡されたあの後、何度も何度も公園の周辺を歩いてみたが家の場所と息子の記憶はどうしても思い出せなかった。 行き場を無くした途一は仕方なく公園に野宿する事にした。 公園にはドーム状のかまくらに似た遊具がある。 その遊具の側面にはいくつか丸い穴が開いている。 幸い天井に穴は開いてなく、雨が降っても直接濡れる事はないので心配せずに眠れた。 問題と言えばこのドーム状の遊具の大きさだ。 身長175センチの途一が丸々収まりきるのには小さすぎた。 どうしても足が半分外に出てしまう。 しかも側面にいくつか穴が開いてるとは言え、やはり狭い空間。 暑くて暑くてなかなか眠れなかった。 よくあの暑さで眠れたものだ。 暑いところで無理に寝たのが悪夢を見た原因かもしれない。 息子が亡くなってから毎日と言っていい程息子の夢をよく見ていた。 夢の中の息子は2、3歳くらいで、途一が出世する前の…あの頃の夢。 今日の夢はいつもと少し違った。 今日夢に出てきた息子には顔がなかった。 名前を呼ぼうとしても名が分からず、顔の無い息子は一つの黒い影へと変わり自分を責めて襲って来る。 暑さから見た夢なのか息子を忘れた罪悪感から見た夢なのかは分からない。 もしかしたら本当に、息子は自分を忘れた父親を責めてあんな夢を見せたのかも知れない。 今まで散々無視して来たくせに死んでまで自分を無視し続けるのか…と責めているのかも知れない。
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