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「…千代…婆…?
千代婆!!」
懐かしいその姿を抱き締めていた。
「千代婆久しぶり!!
元気だった!?
何で千代婆がこんなところに?」
「何だいアンタ?
アンタ何か知らん。
お離し!暑苦しいねぇ」
懐かしのその人は皺だらけの顔を更に皺だらけにして、煩そうに持っていた箒を割り込ませ途一との距離を取る。
「俺だよ!途一だよ!!
白城剛鉄の息子の白城途一!!」
「剛鉄…?」
「そう林檎畑の!!」
「林檎畑の白城…。
………アンタ…一坊かい?」
「そう!!一だよ!!」
「小便たれで泣きべそ小僧の一かい!!」
開いているのか開いていないのか分からない細い目を精一杯見開いて途一を見る。
(小便は余計だ小便は…)
昔この駄菓子屋によく来ていた。
途一が小学生の頃、千代婆は既に婆さんだった。
一(イチ)と言うのは千代婆が途一に付けたあだ名だ。
名前をなかなか覚えてもらえず、結局千代婆が呼びやすい『一』や『一坊』と言う呼び方になった。
昔と全然変わってないその姿が懐かしくて嬉しい。
(でも…全然変わってないけど今何歳なんだろう…)
軽く500歳か1000歳はいってるんじゃないだろうか?
魔女の様な千代婆ならそのくらい生きていてもおかしくない。
「千代婆何でここにいるんだ?
こんな都会に…」
「都会?
バカ言うでないよ。
ここがアタシの家だからアタシはここに居んのさ。」
「えっ…だって…千代婆ん家は…。」
…そんなはずない。
ここがあの町のはずない。
(今朝まで俺はあの公園にいたんだぞ?)
東京にいたんだ。
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