死神

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皮肉な事に少女が口にした事は事実だ。 親の脛を噛じって生活して来た俺は家庭を持って真面目な仕事人間へと変った。 結婚当初は家事や子育てもよくやっていた。 それが出世してからと言うもの…いつしか家の事は妻に任せきりになった。 …息子の事も。 毎日遅くまで残業。 息子の顔は寝顔しか見れない。 休日も仕事が入ったり疲れて1日中自分の部屋でゴロゴロ寝ている事が多かった。 家族で旅行に行ったのはもう何年前の事だろう。 息子と最後に遊んだのは…きっと息子が幼稚園くらいの時だ。 思い出すのも苦労するくらい遠い記憶。 休みの日、息子が時々部屋を覗きに来ていたのを知ってる。 だけど疲れていて遊ぶ気にならなかった俺は息子よりも睡眠を取った。 愛してなかった訳じゃない。 あまり遊んでやれない事を申し訳なく思ってた。 だから一年前のあの日…久しぶりに家族で遊園地に行く事を予定してたのに… それなのに… その前日…息子がトラックに跳ねられて死んだ。 息子はトラックに跳ねられたにも関わらず綺麗なまま眠る様に亡くなった。 横たわる息子の顔は…いつも見ている寝顔と同じ顔だった。 でも…もう二度と目を覚ます事がない。 眠る様に横たわる息子の姿を見た瞬間…俺の中で何かが壊れた。 息子が死んだ時から俺の時間は止まっている。 周りの時はどんどん進んで行くのに…俺だけあの日に取り残されたまま…未だに動けないでいる。 たいして遊んだ記憶も話した記憶もないけど… 妻と息子は俺の支えだった。 息子が亡くなってからと言うもの、仕事に身が入らず脱け殻みたいに何も手につかなかった。 そんな俺に会社は冷たくて… ついに昨日、リストラの対象になった事を告げられた。 身を削って…家族の…息子との時間まで削って会社に尽くして来たのに。 それを知った妻には離婚して欲しいと言われて… 何もする事もなく… 現実逃避するかのようにこうやってただぼんやり公園のベンチに座っている。 そんな…全てを失った俺に…思い出したくもない事を思い出させて、黒衣を身に纏う少女はいったい何を求めるのか?
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