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「何だよお前…何で俺の事知って…」
「何でも知ってるって言ったよ?」
―クスッ
マントの奥から小さな笑い声が零れた。
首を少しだけ右に傾けた愛らしい仕草。
「……お前…お母さんかお父さんは?」
「………………いない。」
「いない?」
「そんな事よりおじさん?
タマゴ貰ってくれるでしょ」
「…いらない!!」
差し出して来るタマゴを振り払おうとした。
振り払おうとしたけど寸前で止めたのは少女のある一言が気になったからだ。
「いいの?」
「えっ…」
「タマゴ…割れちゃうよ?
割れたらおじさん後悔するよ?」
「後悔…?」
「言ったよね?
このタマゴは心のタマゴなんだって。」
―スゥ…と右腕をあげて人差し指を一定の方向に差し示し、少女は言った。
「あの子。」
(あの子?)
「あの子分かる?」
差し示す先には一人の少年がいる。
少年も目の前に居る少女と同じく小学2、3年生くらいに見える。
横断歩道が青になるのを待ってるようだった。
(誰だ…?)
「いや…知らない。」
頭を振って知らない事を意思表示して見せた。
「……………あの子はコータ。」
「…コータ?」
「このタマゴはあの子の心のタマゴ。
タマゴが割れたらあの子の心も壊れる」
「そんな訳ないだろ!
俺が信じるとでも?」
「嘘じゃないよ?
信じないなら割って見せてあげる。
その代わりあの子死んじゃうよ?」
ドクンドクンと心臓が音を立てた。
そんな事あるはずない。
頭ではそう分かっているのに、なぜかこの少女の言葉が本当の事のようで途一を不安にさせた。
「…ふざけんな!!
何がしたいんだ?
俺に何をさせたい…?」
「ふざけてなんてない。
最初から言ってる…おじさんにこのタマゴを貰って欲しいって」
「何で俺が…どうして俺なんだ?」
心のタマゴなんてバカげている。
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