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「死神!!
息子は…息子の記憶は!!?」
『…子供の記憶は…まだ返せない』
「どうして!!?」
『おじさんがタマゴを孵化させる事が出来たら返してあげる』
「約束が違う!!」
『育てて。早く孵化させて』
「死神!」
『期限は…7日…』
「待て!死神!!」
少女の声がどんどん遠くなって行く。
『…く…孵化…て…』
「死神ーーー!!!」
公園には途一ただ一人が取り残された。
「クソッ!クソッ!!」
脱力して地面に座り込む。
爪が剥がれてしまいそうな程強く土を握り締めた。
あんな…得体の知れない少女を信じた自分がバカだった。
(…そうだ…そうだ写真!!)
家に帰れば息子の写真がある。
写真だけじゃない、ビデオだってある。
(家に帰ろう!!)
立ち上がり足を進めた。
けれど進めた足はすぐにピタリと止められる。
「家…」
家は…家はどこだ…?
どこに進めばいい?
俺の家はどこだ…?
「―――っつつ!!」
恐怖が途一を襲った。
「俺の家はどこにある…?」
―思い出せない―
「な…で…何で?
…何で!何で!何で!?」
いったい自分はあの漆黒の少女にいくつ記憶を奪われたのか。
どうして自分がこんな目に合わなければならないのか。
絶望に似た感覚。
途一は両手で顔を覆った。
―コツン…
足に何かが触れる。
顔から手を外し何かに触れている足を見た。
足には…
死神に渡されたタマゴが…
それを両手で拾いあげ、ギュッと強く…でも優しく抱き締めた。
(絶対…)
絶対思い出して見せる。
記憶の中の…
キミに誓うよ。
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