ウェリントン基地

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タケルの返礼を確認したのかどうかのタイミングで、再び走りだした。 さて、俺も一旦部屋に戻るか? 「失礼いたします!」 その場から立ち去ろうしたタケルは、背後からの声に、思わず足を止め、振り返った。 声の主は、若い女性だ。 二十代中頃といったところか? 落ち着いた雰囲気の女性だ。 身長は、タケルよりやや低い。 黒髪と呼ぶには、やや青みの強すぎる独特な色合いの頭髪と、同色の瞳が印象的な、なかなかの美人だ。 タケルが振り返るのを確認すると、素早く敬礼を解き直立不動の姿勢をとった。 その姿勢、隙なく着こなした制服。 紛れも無い軍人だ。 「失礼いたします! タケル・ゴウ中佐とお見受けいたしましたが!」 よく透る声。 好感の持てるタイプだ。 「確かにそうだが、貴官は?」 改めて敬礼の姿勢をとる挙措が、何とも女性らしい。 「自分は、本日付けで中佐の副官に命ぜられました、、ロゼッタ・『チェリーブロッサム』准尉であります!」 タケルは思わず絶句。 「あの、、どうかされましたか?」 准尉の怪訝そうな声に、我に返る。 「あ、、いや、、 准尉、、一つ聞いていいかい?」 タケルは、ある可能性について、確認する事にした。 「はい、、なんでしょうか?」 「准尉、、貴官に軍人の妹さんはいないか?」 「いえ、、、おりませんが?それが?」 「あ、、いや、、いいんだ。 気にしないでくれ」 ・・・・・・・・・・・
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