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「だいたい、聞いて教えてくれる位なら、聞かないでも教えてくれますって」
確かに一理ある。
「そんなくだらない詮索するより、忙しい筈の時間に『のんびり出来る』幸せに感謝しましょう」
シンの視線が、いつの間にかフロアの方に向けられている事にタケルは気付いた。
その視線の先には、士官服の若い女性が二人。
楽しげに談笑していた。
「あぁ、
『ダブル・チェリーズ』は、すっかり仲良くなったみたいだな」
「何ですか?その売れないアイドルユニットみたいな名前は?」
シンは、すっかり呆れ顔だ。
タケルに『ありがたい』コンビ名を付けられたのは、二人の副官である。
偶然にも二人とも、
『チェリーブロッサム』と言う、些か風変わりなファミリーネームと、出身地が同じ『コータル』である事がわかり、初対面にして、意気投合したようだ。
チェリーズのおっきい方こと、ロゼッタ准尉はタケルの副官である。
女性としては、やや長身の部類に入るモデルばりのスタイル。
派手さはないが、整った顔立ちと落ち着いた雰囲気からは想像もつかないが、士官学校卒業したての21才である。
かたや、ちっちゃい方こと、アリシェラ少尉はシンの副官である。
『小柄』『華奢』『童顔』と三拍子揃った彼女は軍服を着ていてさえ、およそ軍人に見えない。
そんな彼女は、とにかくよくしゃべる。
それも身振り手振りを加えてだ。
そしてなにより、よく笑う。
屈託の無い、周囲の者がついつられてしまう様な笑顔の持ち主だ。
最初は、些か緊張の面持ちだったロゼッタも、いつの間にかアリシェラとの会話が弾み始めたようだ。
その光景は、よくできた『姉』と、元気な『妹』そのものだ。
などとタケルは思うのだが、口には出さない。
万が一にも『少尉』の耳にでも入ったら、さすがにマズイ。
なにせ、外見はともかく実際は『年齢』も『軍歴』も『准尉』より二つ上の『お姉さん』である。
「全く、、うちの少尉の『お子ちゃま』っぷりにも困ったもんです」
シンの突き放した様な物言い。
こう言い方は、実は珍しい。
シンは誰に対しても、基本物腰柔らかで丁寧だ。
感情の起伏も、あまり無い様に見える。
だが、冷静で熟成された人格という訳ではない。
むしろ逆だと、タケルは思っている。
他人に興味がない。
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