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「メーディ!メーディ!!至急救援を乞う!」
通信士の叫びがブリッジに響く。
なんでこんな事に!!
対空駆逐艦『シラユキ』の艦長マフディ・ラウ大尉は、手にしたハードスーツのヘルメットを叩き付けたい衝動をかろうじて堪えた。
味方の勢力圏じゃなかったのか?!
威嚇一発で敵は逃げ出すのではないのか?
そんな事を確認するより今は優先すべき事があった。
「防御フィールド!展開急げ!!
総員対空戦闘用意っ!」
艦長の命令に応える様にブリッジの外の景色に淡い青のベールがかかる。
光学系兵器のエネルギーを中和、拡散させる防御力場が展開された証だ。
刹那、ベールに虹色の花が散る!
花の正体は、敵機からの攻撃だ。
二つのエネルギーが、互いに干渉し、打ち消しあう事で生まれる一瞬の徒花。
二つ、三つと極めて狭い範囲に花が散って見えるのは、敵手の技量の凄さを物語っていた。
驚異的な精度の攻撃により、中和しきれなかったエネルギーの余波で艦体がビリビリと小刻みに震える。
「敵機!二時方向より急速接近!!」
索敵士の示した方向に視線を向ける。
背後の闇の裂いてまばゆい排気炎の煌めきが急激に大きくなっていく。
「来るぞっ!
対空迎撃っ撃てっ!!」
豪雨の如くの砲火が降り注ぐ中を、敵機は泳ぐ様に擦り抜けながら、一気に加速!!
翼を広げた猛禽を思わせるシルエットを見せ付ける様にブリッジ至近を掠める様に抜けていく!
青白い排気炎の残滓を彗星の尾の様に曳いて遠ざかる姿は、一瞬見入ってしまう程に美しい。
「気を緩めるな!反復攻撃っ!来るぞ!」
そう、それは終わりではない。
「『ファントマ』全機射出!うろたえるな!
戦力的にはこちらが有利だ!!」
自ら鼓舞させるかの艦長の言葉に嘘はない。
対空駆逐艦は、対単座戦闘艇迎撃に機能特化した艦種だ。
一対一なら絶対有利。
いや、その筈である。
だがしかし、心の片隅に浮かんだ、どす黒い不安という名のシミが急速に広がっていくのを感じていた。
それは、『シラユキ』の全乗員も同じ思いであった。
敵は並の相手ではない。
ファントマ射出の振動に揺れるブリッジに、通信士の声が響いた。
「至急救援を!敵は、、『黒き龍』だ!!」
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