スターゲート

2/4
前へ
/38ページ
次へ
「閣下!ど、、どうぞこちらに!」 タケルは奥の席を示しつつ壁際に身を寄せた。 周囲に遮蔽物らしき物がほとんどない二階のテラス席で、重要人物を座らせるのに本当に正しい席位置かはわからない。 世間的には、正しい筈の出入口から一番遠い席をとりあえず勧める。 「先輩っ!敬礼っ!」 シンの小声の注意に慌てて敬礼。 目の前を通り過ぎていく『伝説』を身を強張らせて見送る。 シンよりやや低い頭の位置。 男性、それも軍人としてはかなり小柄だ。 ニュース映像等で見た時の印象との違いに、僅かな戸惑いと意外さを感じながら、タケルは『伝説』を視線で追った。 視線の先で、シンが絶妙なタイミングで椅子を引いてるのが見えた。 コダマ中将は、軽く手を挙げて敬礼を解く様に促してから、ゆっくりとした所作で腰を降ろす。 「二人とも、まぁ掛けたまえ」 中将の柔らかな声に促され、二人は席につく。 タケルは独特の緊張感を感じながらも、意外と冷静な自分に気づいた。 視線の端でシンが眼と僅かな手振りで合図。 「閣下!コーヒーでよろしいですか?」 よろしいも何も、それ以外の選択肢にはミネラルウォーターしかない。 とりあえずロゼッタにコーヒーを頼もうとタケルは立ち上がった。 「いやぁ、、それには及ばんよ」 コダマ中将は軽く右手を上げた。 「!」 タケルは思わず息を呑む。 その右手に、唐突に紙コップが現れた。 誰かが差し出したらしいと気付くには、数秒を要した。 それ程、その出現は唐突だったにもかかわらず、紙コップのコーヒーには僅かな揺れもない。 「少佐、すまない」 「どういたしまして」 笑いを含んだコダマ中将の声に、若い女性の声が応じた。 「な?!」 その声の意外な近さに驚き、タケルは声の方に振り向いた。 「な?」 振り向いた視線の先に、艶然と微笑む若い女性の顔があった。 ……… 「ほぅ?貴官は驚かんのだな?」 コダマ中将が興味深げに目を細めた。 居合わせた一同が、驚き戸惑う中、二人だけが平静であった。 「閣下の副官殿とは、些か面識がありまして」 不機嫌そのもの表情でシンが応じた。 「今をときめくナオエ中佐が、私ごときを覚えていてくださるとは! でも覚えていてくださってるなら、その物騒な物はしまっていただけませんか?」
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加