…二…

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「艦長!」 張りのある声がフロアに響いた。 テラス席の先客達の視線が向けた先に、声の主がいた。 三人の男。 当然軍人だ。 周囲に対して異彩を放っているのは、その服装。 ほぼ全身、白で統一されたそれは普通の軍服ではない。 『礼装』 と呼ばれる式典用の服装だ。 「大尉!こっちです。」 シンが軽く手を挙げ、自身の場所を示した。 先頭に立つブラウンの髪を短めに刈った実直そうな人物が、シンの副長のニールセン大尉らしい。 数歩近づいた所で、三人とも背後のコダマ中将に気づいて歩みを止め、慌てて敬礼。 「大尉、閣下は職務外であられる」 シンの一言。 要は気にするなと言う事だ。 コダマ自身が軽く頷いてそれを肯定する。 ニールセンが軽く目礼を返すとシンに向き直った。 さすがにこの辺の機微は心得たものである様だ。 「艦長!ご要望の品、お届けに上がりました!」 手にしていたガーメントバックをシンに手渡す。 「そして、補充要員二名到着しました」 その言葉を待ちかねた様に背後の二人が前に出てきて敬礼。 「デンローブ・シナガワ砲術中尉、ただいま着任致しました!」 向かって右側のが更に一歩前に出て着任報告。 切れ長の黒い瞳と、細く整えられた口髭が印象的な東洋的容貌で、どことなく中世の武人といった雰囲気だ。 落ち着いて見えるが、24、5といった所か? 「アルフォンス・シュトライト・スズムラ操艦中尉!同じくただいま着任致しました」 もう一人も一歩前に出て着任報告。 癖のあるダークブラウンの髪は、今は後ろで束ねられている。 軍人としてはかなりの長髪だ。 やや垂れ気味の目元は、なんとも愛嬌がある。 軍服こそ着ているが、その雰囲気はミュージシャンの方が、よほどしっくりしそうだ。 こちらも同じくらいの年齢に見える。 「よく来てくれました」 シンは、立ち上がりつつ返礼。 「御大将と再び御一緒でき光栄です」 御大将!? シナガワの発した時代錯誤な言葉にタケルは目を丸くした。 「中尉、相変わらずですねぇ」 シンは苦笑い。 「まぁ、なんにせよ中佐殿と一緒なら退屈だけはしないでしょう?」 スズムラは悪戯っ子の表情を浮かべると、視線をチェリーズに向けた。 無遠慮な視線で二人を一瞥。 ロゼッタからアリシェラへ、、 スズムラとアリシェラの目が合った。
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