ウェリントン基地

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普段は、およそ何も考えていない様に見える為に 『昼行灯』 の陰口をたたかれる事もあるが、この男の情報収集力と分析力は、学生時代から飛び抜けていた。 本人いわく 『親切な妖精さんが教えてくれた』 らしいが、、。 「で、、何を与えられたんです? 『エクスカリバー級』 ですか?」 「、、馬鹿野郎ぅ、、」 『エクスカリバー級』 といえば全軍で三艦しかない総旗艦機能を有した超級艦だ。 艦長は最低でも少将。 一介の中佐風情には、夢のまた夢だ。 「お得意の『親切な妖精さん』は教えてくれなかったか?」 「えぇ、どうも休暇中らしくて」 皮肉をぶつけて見ても、なんとも人の悪い笑顔を浮かべるだけだ。 言っても無駄だ。 効いちゃいねぇ。 タケルは抵抗を諦めた。 「『クレイモア級』だそうだ」 「スゴイなぁ!最新型じゃないですか!で、何処に配属なんです?」 「第七艦隊さ、、今は 『シャーウッド宙域』 に展開中だ」 タケルは、最後の一切れを口にほうり込むと、コーヒーを流し込んだ。 「あそこには今、恐い怪物が出るらしいじゃないですか?」 「『黒き龍』の事か?」 タケルの問いに、シンは無言で頷く。 その目元は、笑っていない。 「スゴイ奴らしいな。 二週間で、撃墜百以上なんて信じられんよ」 タケルは皿の上で、しばらくフォークを遊ばせた後、アップル・パイの追加を頼んだ。 「上の連中は、、先輩に『龍退治』をやらせたいんじゃないんですか? 『ドミニオンの英雄』 『カーキの猛虎』に」 「止めてくれないか、、 その呼ばれ方は、、好きじゃないんだ」 「、、すいません」 気まずい沈黙。 何事もなかった様にメイド姿の若いウエイトレスが、アップル・パイをテーブルに置いていく。 「仕方、、ないさ。 今は、、な、、」 まだ熱いパイを一口。 「美味いな、これ」 ・・・・・・・・・・ 「ところで、お前さんはどうなんだ? ここに来たって事は、やっぱり異動なんだろ?」 努めて明るい声で、タケルがシンに問い掛ける。 「えぇ。その通りです」 シンの方もいつもの調子に戻っている。 つい先程の雰囲気など、嘘の様だ。 「どこだと思います?」 悪戯っぽい笑みを浮かべた後輩の問いに、タケルは、さぁ?とばかりに首を傾げて見せる。
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