ウェリントン基地

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事に成功したが、そこで驚愕の事実を知った。 完全待機組には連絡が入っていない! 更に艦長が通信端末を忘れて出掛けているという事だ。 そこで大尉は、少尉に命令を下した。 『二時間以内に探し出して連れて来い!』 そして 『図書館か、スイーツのある店を探せ』 とも。 中佐本人にとっては、かなり不本意ではあるが、客観的には的確な指示の下、ナオエ中佐は発見されたのであった。 ・・・・・・・・・・・ 「それにしても、、」 新たに注文したガトーショコラをフォークで切りながらタケルは呆れていた。 「こんな単純な伝達ミスなんざ、ぶったるんでやがるなぁ!どう思うよ?えぇ?」 「、、おそらく誰か大物が、、急に来たんでしょうねぇ」 シンは二杯目の紅茶の香気を楽しんだ後、一旦カップを置いた。 「大物?」 「えぇ、、恐らくは総指令部辺りから前触れ無しで」 「ありえるなぁ、、」 タケル自身、似た事例を体験した事がある。 どんな組織でも、中央の連中というのは、地方の都合などあまり考え無いものだ。 「まったく、、迷惑なこった」 切り分けたガトーショコラを口に運びながら、タケルはフロアの方に視線をやった。 例の少尉殿が通信ブースから出たり入ったりしている姿が見えた。 中佐二人が、呑気に話している間に、一人で関係各署に連絡や手続きを進めていた。 「見掛けによらず、なかなか優秀みたいじゃないか?」 タケルは本気で少尉を見直していた。 傍目にもテキパキとしていて、動きに少しも迷いが無い。 「あぁ本人に言わないで下さいね? いい気になりますから」 シンは不機嫌そうに、紅茶を一口。 おやおや? タケルは後輩の様子に興味を持った。 基本、他人に気付かれる程はっきりした好悪の感情を表さない男である。 「お前さん、あの少尉殿が嫌いかい?」 「えぇ嫌いですね」 思いがけない即答に、ちょっと驚かされる。 「あんな子に、軍だの戦場だの似合う訳無いじゃないですか」 いつになく神妙な表情のシンの視線は少尉殿に向けられていた。 ・・・・・・・・・・・ 「お待たせしました! 関係各署への連絡、及び手続き終了いたしました!」 タケルより余程様になっている敬礼と共に、少尉殿はナオエ中佐に報告を終えた。
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