11人が本棚に入れています
本棚に追加
数日後、孝行の所属している野球部の引退試合があった。3年生は中間テストの前に、受験や就職活動のため、クラブを引退することになっていた。この試合は、その3年生の引退試合である。
相手は1、2年生の選抜。
孝行
「なおみ、今日野球部の練習試合があるんだけど、見に来ないか?」
なおみ
「うん、行く。こずえも行こうよ」
こずえ
「いいわよ。ねぇ、カッコイイ子いる?」
孝行
「はぁ?男あさりに来るんか」
孝行は、こずえが応援目的じゃなく、男探しということに気づき、呆れていた。
こずえ
「だって、竹本さんみたいなカッコイイ彼氏が欲しいんだもん」
孝行
「ケッ!くだらねぇ。行くぞ」
なおみ
「はーい」
野球グランド。試合前の練習中。
俊彦
「孝行、ピッチングの練習するから、受けてくれないか」
孝行
「はい」
橘俊彦、野球部主将でエースの4番バッター。女生徒の間では人気者だが、彼女はいない。
こずえ
「ねぇ、あのピッチャーの人、かっこいいね」
なおみ
「橘先輩だよ。橘俊彦さん。3年生でエースなんだよ」
なおみは、孝行に誘われてよく野球部のクラブ活動を見に来ていた。
マネージャー
「練習試合始めます」
なおみ
「橘先輩、頑張ってー!」
俊彦
「ありがとう」
なおみは3年生の方を応援していた。これが高校生活最後の試合になるからだ。
こずえは俊彦のことをずっと見て、うっとりしていた。
なおみ
「ねぇ、こずえ」
こずえ
「…」
なおみ
「こずえ?」
こずえ
「…え?何?」
なおみ
「どうしたの?ぼんやりして」
こずえの目線の方を見る。
なおみ
「あーっ、もしかしてこずえ、橘先輩のこと…一目惚れ?」
こずえ
「えーっ、や、やだぁ。そうなのかなぁ」
なおみ
「頑張りなさいよ。応援するから」
こずえ
「う、うん」
試合後、なおみがこずえを俊彦に紹介した。
なおみ
「先輩、お疲れ様です。いい試合でしたね」
俊彦
「ありがとう」
なおみ
「紹介しますね。私の親友の相川こずえさんです」
こずえは俊彦を前に、かなり緊張していた。
こずえ
「あ、あ、相川こずえです」
俊彦
「よろしくね、こずえちゃん」
最初のコメントを投稿しよう!