第2章 試練

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なおみは孝行の行動に驚き、叫び声を上げる。 なおみ 「いやーっ!誰か助けてー、竹本さん!」 なおみの声に気づいた久志と母親が、孝行の部屋に飛び込んできた。 久志の見た光景は、うさぎに襲い掛かる狼のような孝行の姿だった。 久志 「た、孝行!お前何やってるんだ!なおみちゃんから離れろ!」 なおみ 「久志お兄ちゃん!」 久志の声で驚いた孝行は、後ろを振り返ると恐い顔をした久志が立っていた。 孝行の力が緩んだ隙に、なおみは起き上がり、久志の後ろに隠れる。     久志 「バカヤロー!お前なおみちゃんに何をしたっ!」 久志は孝行を殴った。その拍子に孝行はベッドに倒れ込んだ。 孝行 「いってー!何するんだよ!」 久志 「お前、自分のやってること、わかってるのか!?」 孝行 「わかってるよ!」 勢津子 「孝行、いったいなおみちゃんに何をしたの?」 孝行 「…俺はなおみが好きなんだ!だからキスしたんだよ!」 孝行が怒鳴るように言った。 勢津子 「なんて事を…。なおみちゃん、ごめんね、大丈夫?」 なおみ 「…はい」 孝行 「なおみが俺のこと好きになってくれてたら、こんな事にはならなかったんだ。なおみが純二さんと付き合うって言うから、俺、カッとなって…」 久志 「えっ、なおみちゃん、純二と付き合ってるの?」 なおみ 「う、うん。昨日から」 勢津子 「ほら、孝行。なおみちゃんに謝りなさい」 孝行 「嫌だ!俺は自分の気持ちに正直な事をしただけだ!」 勢津子 「孝行!もう!この子は!久志、なおみちゃんを送ってあげなさい」 久志 「ああ、わかった」 なおみは孝行に外されたボタンをとめ、久志に送られて帰って行った。 久志は孝行のした事を、孝行に代わってなおみに謝った。 久志 「…ごめんよ、なおみちゃん」 なおみ 「…」 久志 「帰ったら俺からもきつく叱っておくから」 なおみ 「…うん」 久志 「それにしても純二となおみちゃんがねぇ~。どこで知り合ったの?」 なおみ 「初めて会ったのは9月初めの日曜日。歩行者天国で引ったくりに遭った所を助けてくれたの。今思えばその時竹本さんに一目惚れしたのかもしれない。2度目は次の日港署で」 久志 「へ~、なんか運命的な出会いってやつみたいだな」
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