第2章 試練

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なおみ 「ふふふっ、久志お兄ちゃんって、ロマンチックな事言うのね」 久志 「そうか?」 なんて、話してるうちに弥生公園の前まで来た。 なおみ 「あっ、もうここでいい。ありがとう」 久志 「ああ。これからは孝行は要注意人物だから、学校でも気をつけるんだよ」 なおみ 「うん。ありがとう」 久志はなおみに手を振りながら帰って行った。 家に着くと、母親の勢津子が困った顔をして、久志の事を待っていた。 久志 「ただいま。どうしたの?母さん」 勢津子 「あっ、久志。孝行の事なんだけど…。純ちゃんに言った方がいいかしらねぇ」 久志 「そうだなぁ、何もなかったんなら言わなくてもいいと思うけど…。今日の場合は一応言った方がいいかもしれないな。なおみちゃんも言うかもしれないけど、こっちが加害者だからなぁ」 勢津子 「じゃぁ、電話しておくわ」 勢津子は純二のアパートに電話した。しかし、今日は出勤のため、純二はアパートにいなかった。 勢津子は港署に電話した。電話には西田が対応し、挨拶を交わしあった後、純二と代わって孝行のしたことを話した。 純二 「なんだってー!!」 純二の驚いた声に、一係の人達は一斉に純二の方を見た。 純二 「それで、なおみちゃんは…?」 勢津子 「大丈夫よ」 純二 「孝行のやつぅ」 勢津子 「ごめんなさいね、純ちゃん。私たちがそばにいながら…。それにあなたたちが付き合ってるなんて知らなくて…」 純二 「いいよ、叔母さん。今孝行いる?いたら代わってほしいんだけど」 勢津子 「ちょっと待ってね」 勢津子は孝行を呼び、純二に謝るように促し、受話器を渡した。 勢津子 「いい?ちゃんと謝るのよ」 孝行 「何で謝らなきゃいけないんだよ。たかがキスくらいで」 勢津子 「とにかく謝りなさい」 電話の向こうでの会話が、純二の所にも届いていた。 孝行 「…もしもし」 純二 「孝行!お前、なんて事したんだ」 孝行 「…」 純二 「おい、聞いてるのか!?」 孝行 「聞いてるよ。俺だってなおみのことが好きなんだ。抱きしめたいんだ。キスしたいんだよ。純二さんだけって卑怯だよ」 純二 「なおみちゃんはよそ様のお嬢さんなんだぞ。お前の汚い手で汚されてたまるか!」
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