おいで

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猫が爪を立てて鳴いた。あたしと悠生くんの身体に挟まれ痛かったらしい。 猫を洗濯機の上に戻し、あたし達はまた居間でお茶をすすった。おばあちゃんと昼ドラを見ながら。悠生くんと学校の話をしながら。 「クリスマスプレゼント何欲しい?」 本当に何気なく聞いただけだった。あと一週間で用意できるものだから、悠生くんも手頃なものを考えて答えてくれると思っていた。 「手編みのマフラーとか?」 「却下。マフラーは一週間じゃ編めないよ」 「千紗は何欲しいのさ?」 「うーん、身につけるもの」 「却下。難しい」 帰りに駅まで送ってもらって、あたしは悠生くんの姿が見えなくなったのを確認してから手芸店へ入った。 帰りに何気なさを装って聞いた好きな色。あたしは藍色の毛糸を買い、家へと急いだ。 一週間、間に合うのか。
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