浮かれてるかもしんない

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バスは9時50分に駅に着いたから待ち合わせの場所に10時には着くはずだった。 バスを降りて待ち合わせのコンビニは近くに見える。いつもならゆっくり歩いても5分で着く距離なのに。 今年初めての大雪は街を混乱させていた。除雪車もまだ大きな県道と国道にしか入っていなくて、人が歩く道なんてない。駅からは困った様子の人たちが出てくるのが見えた。飛行機もきっと飛ばないだろうから、大きな被害が出るだろう。 歩いても歩いても、進まない。雪をブーツでかき分け、雪を踏み固め、たまにブーツに入った雪を出しながらあたしはコンビニへと急いだ。 何回も転んで雪まみれになったあたしを見て悠生くんは遭難者みたいだと笑った。 「何する?」 「世界の猫展見に行きたい!」 「お前わかってんの?電車動かないんだぞ?」 「そっか」 今動物園で世界の猫展という企画をやっていて、猫好きの悠生くんと一緒に行けたらどんなに楽しいだろうとずっと前から思っていた。残念だけど確かに電車じゃなきゃ動物園には行けない。 「俺ん家に猫見に来る?」 「行きたい!」 「よし。じゃあ遭難しないようにほれ」 「うん?」 「手」 悠生くんに手を握られ、あたしはもう遭難者だと笑われないように悠生くんの足跡を必死に辿った。 右手で後ろにいるあたしの右手を引っ張ってくれて、あたしが歩きやすいように歩幅を合わせてくれて。 目の前に広がる大きな背中に悠生くんの心の広さを見た。
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