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悠生くんのおばあちゃんにお茶を出してもらった。
雪をかき分けて15分。ほとんどかき分けて進んだのは悠生くんだけど、冷えた身体に温かいお茶はありがたい。
ごく普通の二階建て一軒家におばあちゃんと両親の四人家族。そういえば一人っ子なのも共通してる。
居間でおばあちゃんはテレビを見ていて、その前を今黒猫が横切った。
「わぁ可愛い!おいで」
あたしが手を動かして猫の気を引こうと頑張ったけど、猫は欠伸をしてついには目を閉じてしまった。
「千紗、こっち」
台所の方から悠生くんに手招きされ、あたしは立ち上がった。
今さらだけど、私服の悠生くんってかっこいい。長身でスタイルの良さが強調される。
台所から洗面所へと繋がっていて、洗面所にある洗濯機の上に白猫が丸まって座っていた。
「めっちゃ可愛い」
「だろ?」
「抱っこしていい?」
「毛付くよ?」
「いいの」
あたしは猫を抱きかかえ、頬ずりした。柔らかくて暖かくて猫って本当に気持ちがいい。
悠生くんがあたしの腕の中の猫を撫でる。その手があたしに触れてしまいそう。
気づけばすごく悠生くんと近かった。見上げれば20センチ上には悠生くんの顔。
悠生くんの手が猫から離れ、あたしの頬に添えられる。上を向いたまま近づく悠生くんの唇を、触れる10センチ前くらいまで見ていたけど、もうそこからはただ唇の感触だけ。
自分の心臓の音がうるさかった。
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